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なぜあなたの会社のAIは「社内情報」を読み込めないのか 〜Bocekが提唱する、AI活用4レイヤーモデル〜

なぜあなたの会社のAIは「社内情報」を読み込めないのか 〜Bocekが提唱する、AI活用4レイヤーモデル〜

こんにちは。株式会社Bocek代表の沖村(https://x.com/TakashiOkimura)です。私たちは、エンタープライズ企業を中心に、AIを前提として業務を変えていく「AX(AITransformation)」の支援を行っています。

その中で、当社に寄せられるご相談の8割以上に共通する要望があります。それは、「社内情報を読んで、業務に使える回答や成果物を作るAIが欲しい」というものです。

例えば、次のようなご相談です。

  • 過去の商談情報をもとに、提案資料のたたき台を作りたい
  • 過去の問い合わせ事例を検索し、回答案を自動で作りたい
  • 社内規程やマニュアルを参照し、社員からの質問に答えたい
  • 過去の見積書や商品情報を使い、新しい見積もりを作りたい

検索する情報や、最後に出したい成果物は会社によって異なります。しかし、根本は同じです。社内にある情報を、AIが安全かつ正確に使える状態にしたいという課題です。

結論として、社内情報を使うAIの成否は、AIモデルやSaaS導入だけでは決まりません。情報の保存場所、データの状態、AIの機能、実際の業務という4つの層を、一緒に設計できるかによって大きく左右されます。

この記事では、Bocekが企業のAI導入支援で使っている独自の整理方法である「Bocek AI活用4レイヤーモデル」を紹介します。これは、AI導入に関わる論点を4つの層に分け、何が問題なのか、どこから手を付けるべきかを整理するための枠組みです。

この記事の想定読者

  • 社内情報を活用したAIを導入したいDX・AI推進担当者
  • AI導入の予算、効果、リスクを判断する管理者・経営層
  • AIの検証を始めたものの、次に何をすべきか分からない担当者

この記事を読むことで分かること

  • なぜ自社のAIが社内情報をうまく使えないのか
  • AI導入で検討すべき4つのテーマ
  • 自社の現状をどの順番で整理すればよいか
  • 小規模な実証実験であるPoCや、予算化へ進むために何をすべきか

なお、この4レイヤーモデルは、Bocekが支援現場で蓄積してきた経験をもとにした実務上の考え方です。すべての企業に共通する唯一の正解ではありませんが、複雑になりやすいAI導入を整理する出発点として活用できます。

AIが社内情報を読めないのは、ツール選びの問題ではない

社内情報を読むAIが作れない原因のほとんどは、AIツールの性能や選定ミスではありません。AIが読みに行く先である「データ」と「その置き場所」が、AIを前提とした状態になっていないことが原因です。

だから、検討すべき論点はAIの外側にあります。ここを分けずに議論すると、話は永遠にまとまりません。逆にいえば、論点を分けて並べるだけで、やるべきことは驚くほどシンプルになります。

その分け方が、この記事のテーマである「4つのレイヤー」です。

いただくご相談の8割以上は「社内情報を読むAI」

私たちBocekは、先に述べたとおり、エンタープライズ企業を中心に法人向けのAX(AI Transformation)を支援しています。ありがたいことに多くのお問い合わせをいただきますが、その8割以上が「社内情報を読み込んだAIが欲しい」というご要望です。(これは公的な統計ではなく、当社にいただくご相談の傾向値です)

具体的には、こういったご相談です。

  • 過去の商談情報をもとに、提案資料をつくりたい
  • 過去の問い合わせ事例をもとに、回答文を自動生成したい
  • 社内規程やマニュアルを検索して、現場からの質問に答えさせたい
  • 過去の見積書をもとに、新しい見積もりの根拠を出したい

検索する対象も、最終的に出したいアウトプットもバラバラです。しかし共通しているのは、「社内にある情報を読ませたい」という一点です。

「アップロードして使う」では、なぜ足りないのか

すでに社内で、資料をアップロードしてAIに読ませるタイプのツールを試している方も多いと思います。NotebookLMのようなサービスや、ChatGPT・Geminiへのファイル添付です。手元の資料を放り込めば、その場で要約も質問応答もできますし、実際とても便利です。

ただ、これらはあくまで個人の活用範囲にとどまります。

  • 読ませられるのは、その人が手元に持っている資料だけ
  • 誰かが毎回アップロードしなければ、AIは社内のことを何も知らない
  • 元の資料が更新されても、AIが見ているのは古いまま
  • 使い方も成果も個人に閉じるため、組織の標準にならない

つまり、社内情報と連携しない範囲での、末端の効率化です。効果は「その人の、その作業が少し速くなる」ところで頭打ちになります。

私たちがご相談をいただく企業が本当に求めているのは、その先です。

観点アップロード型連携型のエージェント
読める情報手元にある数ファイル社内に蓄積された情報全体
更新への追従毎回アップロードし直す元データの更新が自動で反映される
正確さの担保使う人のファイルの選び方に依存する参照範囲と権限を設計して担保する
広がり方個人ごとにバラバラ業務プロセスとして定着する

既存の管理情報と自動的に紐づき、より多くの情報を正確に読み取り、組織としてきちんと浸透するエージェント。これが本命です。そして、ここに踏み込んだ瞬間に、次の壁が立ち上がります。

なぜ検討が止まってしまうのか

多くの担当者の方とお話ししていて感じるのは、「できない理由」が複数同時に出てきて、それを一緒くたに検討してしまい、収拾がつかなくなっているケースが非常に多いということです。

  • 「ファイルサーバーにつなげないらしい」
  • 「情報システム部門から権限が下りない」
  • 「そもそも資料が画像のPDFで、中身が読めない」
  • 「精度が業務で使えるレベルにならなかった」
  • 「効果が説明できず、稟議が通らない」

これらは全部、レベルの違う話です。にもかかわらず同じ会議で同時に議論されるので、結論が出ないまま時間だけが過ぎていきます。

なぜこうなるのか。AIツールは「入れれば完成する」ものだと思われているからだと私は考えています。実際には、社内情報を読ませるためには、その情報が最適な形で保存されていなければ、最適化する作業が必要になります。つまり、新しいものを構築するだけでなく、今のデータの保存体制そのものを見直す必要があるのです。

私たちの経験上、AIが作れない原因の大半は次の2つに集約されます。

  • データが汚い:AIが読み込みにくい形式で保存されている(画像のPDF、レイアウトが崩れたExcel、書式がバラバラの議事録など)
  • 連携できない:AIと接続できない仕様のファイルサーバーに保存されている/権限上、AIからの読み取りが認可されていない

(これは私たちの支援経験にもとづく見立てであり、すべての企業に当てはまると主張するものではありません)

普段はこの整理を商談やコンサルティングの中で行っていますが、せっかくなので今回は記事という形で皆様にお届けします。

Bocekが提唱する、AI活用4レイヤーモデル

私たちがお客様と計画を練るときは、必ず「レイヤー」を定義して、レイヤーごとに考えるというやり方をしています。

進め方は、次の4ステップです。

  1. レイヤーの概念を理解する
  2. 現状をレイヤーごとに分析する
  3. 理想のレイヤーごとの在り方を策定する
  4. レイヤーごとに施策を実行する

この順番で進めれば、「何から手をつければいいか分からない」という状態からは確実に抜け出せます。今日はこのうち「1. レイヤーの概念を理解する」に絞ってまとめます。分析の具体的な方法や、各レイヤーの詳細は、順次記事として公開していこうと思います。

レイヤーは、次の4つです。

レイヤー何を指すか代表的な中身中心となる問い
業務レイヤーAIを使う人と、その業務・効果現場の業務フロー、費用対効果、稟議業務はどう変わる?続けられる?
エージェントレイヤーAIそのもの(処理とUI)検索AI、資料生成AI、回答生成AI実務で使える精度・UX・運用性か?
データレイヤー実際に読ませるデータの中身商談資料のPDF、マニュアルのExcel、議事録AIが読める形式・粒度になっているか?
ファイルサーバーレイヤーデータの置き場所SharePoint、Box、基幹システム全員がアクセスでき、AIに権限が下りるか?

ご相談は上のレイヤー(業務・エージェント)から来ますが、実際に工事が必要なのは下のレイヤー(データ・ファイルサーバー)であることがほとんどです。ここが、この図でいちばんお伝えしたいことです。

以下、下のレイヤーから順に説明します。

ファイルサーバーレイヤー:データはどこに置かれているか

参照したいデータの保存先のレイヤーです。エンタープライズでメジャーなのはSharePointやBox、そして基幹システムです。たまにGoogle Driveの企業もありますし、「そもそも決まっていない」という企業もあり、ここは本当にまちまちです。

このレイヤーで大事な確認ポイントは3つです。

  • みんながきちんとアクセスできる状態になっているか(特定の部門しか入れない、担当者のPCの中にしかない、という状態になっていないか)
  • 同じデータが複数のファイルサーバーに散在していないか(どれが最新か分からない状態は、AIにとっても人にとっても致命的です)
  • AIがちゃんと読めるように権限設定されているか(AIから接続する仕組み、つまりAPIやコネクタがあるか。情報システム部門の承認が取れるか)

3つ目は見落とされがちですが、技術的に接続できることと、社内ルール上つないでよいことは別の話です。ここは早めに情報システム部門を巻き込んでください。プロジェクトの後半で発覚すると、それまでの検討がまるごと止まります。

データレイヤー:AIが読める形になっているか

実際に保存されているデータそのもののレイヤーです。過去の商談資料のPDF、お客様対応マニュアルのExcel、議事録のWordなど、現実に存在するファイルの中身の話です。

ここは本当に奥が深いのですが、大事なのは「AIが読みやすいように情報が管理されているか」という視点です。

たとえば、スキャンしただけの画像PDFは、そのままではAIは中身を読めません。人間の目には読めていても、AIから見れば「何も書かれていないファイル」と同じです。この場合、マークダウン形式などのテキストに変換して保存しておく必要があります。

よくある状態と打ち手の方向性を、簡単に整理します。

よくある状態AIから見た問題打ち手の方向性
スキャンした画像のPDF文字として認識できないOCRでテキスト化し、別途保存する
罫線とセル結合だらけのExcel表の構造を誤って読み取る構造を整理し、機械が読める形に変換する
同じ資料が複数バージョン存在するどれが正しいか判断できない最新版を決め、参照先を一本化する
略語や社内用語が説明なしで頻出する意味を取り違える用語集を用意し、あわせて読ませる

データが読みにくい場合は、データをクレンジングする(AIが読み取れる形に変換して、別途管理する)仕組みをつくる必要があります。元のファイルを全部作り直すのではなく、「AI用の中間データ」を別に持つ、という考え方です。詳しくは別の記事で紹介する予定です。

エージェントレイヤー:AIそのものをどう作るか

実際にデータを読み取り、情報を処理するUIのレイヤーです。たとえば、商談資料を検索して内容を読み取り、スライドを生成するAI。過去の問い合わせ事例から回答案を考えるAI。

お問い合わせをいただくとき、真っ先に話題になるのは、まさにこの部分です。「どのツールがいいか」という議論も、ほぼここに集中します。

ただ、私たちがコンサルティングでお伝えしているのは、データレイヤーとファイルサーバーレイヤーの問題を解決しないと、あなたが求めるAIの構築は難しいということです。土台が整っていない状態でツールだけ入れても、「思ったより使えなかった」で終わってしまいます。

そのうえで、このレイヤーで大事なポイントは3つです。

  • 今の業務から大きく変えすぎないこと(新しい画面を覚えないと使えないAIは、驚くほど使われません)
  • 使えるレベルの精度とUXであること(「たまに間違える」で許容できる業務なのか、そうでないのかを最初に決めておくべきです)
  • 運用コストを含めた運用性(誰がメンテナンスするのか。データが増えたときにどうするのか)

業務レイヤー:作って終わりにしないために

これは、AIを使う側の人間の話です。作って終わりではダメです。業務で実際に使い、運用まで落とし込めるか。そして経営判断として、継続運用できるように費用対効果を示せるか。

計画段階で大事なのは、次の2つです。

  • 業務がどう変わるのかを言語化すること(誰の、どの作業が、何分から何分になるのか)
  • 経営陣の立場で納得できるように、費用対効果などの情報をまとめること

ここを考えないと、そもそも稟議を下ろすことができません。技術的にどれだけ良いものができても、投資判断の材料がなければ社内は動きません。(特に日本のエンタープライズのお客様の場合は、導入に対する費用対効果などの指標を稟議書で求められるケースが多いです)

決裁者の方が見るのは、だいたい次の項目です。計画段階から、この形式で埋められるようにしておくことをおすすめします。

項目押さえるべき内容
対象業務誰の、どの作業を変えるのか
現状1件あたりの時間、月間件数、担当人数
導入後1件あたりの時間、削減時間、品質面の変化
投資額初期構築費、月額運用費、社内工数
リスク精度の限界、情報漏えい対策、使われなかった場合の損失
拡張性同じ仕組みを他業務へ展開できるか

なお、ここまでは計画段階の話を中心に書きました。もちろん運用に入ってから考えることもたくさんありますが、それも今後のブログテーマとして書かせていただきます。

事例:見積もり自動生成AIを、4レイヤーで整理する

実際にあったお客様の事例をご紹介します。エンタープライズ企業で、将来的に数千人が使うAIエージェントの企画を行った案件です。最初にいただいたご相談は、たった一行でした。

見積もりを自動生成するAIを作りたい。

ここからコンサルティングを通して、情報を次のように整理しました。

レイヤーAs is(現状)To be(理想・打ち手)
ファイルサーバー基幹システムに格納。API連携の機能はあるが、基幹システム側にAI機能がない基幹システムから情報を取り出し、AWSに中間データとして保存する
データ画像で保存されている見積書が多く、そのままでは読めないOCRでテキスト化し、マークダウン形式で保存。企業情報や商品情報も紐づけて管理する
エージェント該当する仕組みは存在しない新規で構築。UIはClaude Designを使い、現場と一緒に丁寧に作り込む
業務毎回、過去の見積書を手作業で探して作成。分からない場合は前任の先輩に質問。1件あたり約20分根拠つきで自動生成し、1件あたり約3分に短縮

業務レイヤーの効果は、次のように計算しました。

  • 1件あたり:20分 → 3分(17分の短縮)
  • 月間件数:月400件
  • 年間削減時間:年1,360時間
  • 費用対効果:年間544万円相当

最初は「見積もりAIを作りたい」という一行だったご相談が、レイヤーで整理すると4つの具体的な工事項目に分解されました。ここまで来れば、どのツールを入れるべきか、どう情報を整理すべきか、誰を巻き込むべきかが、自然と見えてきます。

今日からできること

いきなり全社の棚卸しをする必要はありません。まずは、いま社内で話題になっているAIのテーマを一つ選び、次の表を埋めてみてください。30分あれば下書きはできます。

レイヤー埋める内容
業務誰の、どの作業を変えたいか。今、1件あたり何分かかっているか
エージェントどんな画面で、どんな結果が返ってきてほしいか
データ読ませたい資料は何か。それは今、どんな形式で保存されているか
ファイルサーバーその資料はどこにあるか。AIから接続できるか。権限は誰が持っているか

埋まらないマスが出てきたら、それがあなたの会社の次のアクションです。空欄が下のレイヤー(データ、ファイルサーバー)に多いほど、AIツールの選定を急いでも成果は出にくい、と考えてください。

なぜ「今」なのか

ここからは沖村個人の意見です。

データの状態は、放っておくと悪化していきます。今日つくられる資料も、明日つくられる資料も、AIが読めない形式のまま増え続けるからです。整理を先送りするほど、あとで整える対象は増えていきます。

一方で、レイヤーごとに整理する作業そのものは、大がかりなシステム投資を伴わずに始められます。ファイルサーバーの棚卸し、データ形式の確認、業務時間の実測。どれも今週から着手できることです。

そして、この整理ができているかどうかが、AI活用の速度をそのまま決めます。土台が整っている会社は、新しいAIツールが出るたびに素早く試せます。整っていない会社は、そのたびに同じ場所でつまずきます。

「これはうちでもできそうだ」と思われた方は、今すぐにでも、ぜひ予算取りの準備を始めてください。そして是非Bocekと打ち合わせのお時間をいただければと思います。

まとめ

ここまでお読みいただきありがとうございました。

改めて、結論を整理します。

  • 社内情報を読むAIが作れないのは、ツールの問題ではなく、データとその置き場所の問題であることがほとんど
  • 論点は業務/エージェント/データ/ファイルサーバーの4つのレイヤーに分けて考える
  • ご相談は上のレイヤーから来るが、工事は下のレイヤーから必要になる
  • レイヤーごとに整理すれば、やるべきことと、稟議に必要な材料が自然と見えてくる

今回ご紹介したのは、あくまで「レイヤー」の概念のみです。正直に言えば、一つひとつに細かい概論があります。さまざまな視点を総合的に集めて意思決定するものなので、PMをよくやる私から見ても、難易度は非常に高いテーマです。

しかし、この概念で情報整理を行うだけでも、やることはかなりシンプルになります。今後社内でAXの施策を進める場合は、ぜひこの考え方を参考にしてみてください。

次回以降は、各レイヤーの詳しい話や、現状分析のやり方について書いていきます。Bocekのブログを楽しみにお待ちください。

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