日本マイクロソフトは、10月23日に法人向けの生成AIの取り組み状況に関する説明会を開催しました。この中で、同社の生成AIへの取り組みや導入事例、今後のパートナー施策について報告がありました。
参考:ZDNET Japan
マイクロソフトの生成AIサービスの導入
説明会では、日本マイクロソフトの執行役員 常務 クラウド&AIソリューション事業本部長の岡嵜禎氏からのマイクロソフトの生成AIサービスの導入状況が報告されました。岡嵜氏は、生成AIが企業に広く受け入れられている背景として、AIの汎用性、推論エンジンの高精度化、そしてマイクロソフトのクラウドサービスによるサポートの3点を挙げました。
岡嵜氏によると「Azure OpenAI Service」を始めとしたマイクロソフトの生成AIの導入事例は国内で560社以上、グローバルでは1万1000社以上に昇ります。特に、日本の金融業界では3大メガバンクが導入済みであり、政府や自治体でも利用が進められています。
実際の導入事例として、メルカリの「メルカリAIアシスタント」や、教育業界大手のベネッセコーポレーションの進研ゼミ小学生講座の夏休み自由研究の相談窓口が紹介されました。
株式会社メルカリは、10月17日に新たなAIアシスタント機能「メルカリAIアシスト」の提供を開始したと発表しました。 この新機能は、生成AI・大規模言語モデル(LLM)を活用して、様々なシーンでメルカリのユーザーへサポートを提供しま[…]
また、Azure OpenAI Serviceの新サービスとして「Azure AI Content Safety Service」の一般提供が開始されました。このサービスでは、ユーザーが有害なコンテンツの検出や、監視・制限を行うことができます。
さらに、Azure OpenAI Service上でユーザーがファインチューニングできる言語モデルとして「GPT-3.5-Turbo」「Babbage-002」「Davinch-002」が追加されました。
企業の生成AI活用のポイント
岡嵜氏は、企業が生成AIを活用するポイントとして、次の3つを取り上げました。
①「Copilot」による生産性の向上
②独自のAI基盤の構築
③ユーザーのデータ保護
①「Copilot」による生産性の向上
「Copilot」はユーザーを補助する役割を持ちます。AIを活用し、ユーザーの作業効率や生産性を向上させることが目的です。これまで、次のようなサービスが提供されています。
- 開発者向け:「GitHub Copilot」
- 市民開発者向け:「Copilot in Power Platform」
- ナレッジワーカー向け:「Microsoft 365 Copilot」
- 業務向け:「Dynamics 365 Copilot」
- 医療向け:「DAX Copilot」
- サイバーセキュリティ向け:「Security Copilot」
②企業に合ったAI基盤の構築
AI基盤の構築として、マイクロソフトは企業の合わせたAI導入を支援する「Copilot stack」アーキテクチャーを提供しています。ここでは、ユーザーを3階層のモデルに分類しています。
- アプリケーション層
生成AIをプラグインとしてアプリケーションに組み込んで活用できる。 - AIオーケストレーション層
目的に応じて様々な大規模言語モデル(LLM)を組み合わせて活用できる。 - 基盤層
ユーザーが自身でLLMなどを開発できる。
基盤層は難易度が高いため、現状の90%以上のユーザーがアプリケーション層またはAIオーケストレーション層で生成AIを利用しているとされています。また、生成AI活用のための機能群「Azure AI Studio」も提供していると紹介しています。
③ユーザーのデータ保護
使用されるデータはユーザーのものであり、それをマイクロソフトのAIモデルの最適化には使わず、ユーザーのデータを保護することを重視しているスタンスを強調しています。
9月には、Copilot利用時の著作権リスクなどを保護する「Copilot Copyright Commitment」が公表されています。
これらのポイントを取り入れることで、生成AIの導入と活用がより効果的になると岡嵜氏は指摘しています。
パートナー施策と新たな支援プログラム
日本マイクロソフトは生成AI分野でのパートナーシップの強化を進めており、「Microsoft AI Co-Innovation Labs」を神戸市に設立。さらに「Azure OpenAI Service リファレンスアーキテクチャ 賛同パートナー」プログラムも開始し、開始当初の45社から100社への拡大を達成しました。
また、新たに「Microsoft 生成AI 事業化支援プログラム」を始動することが発表され、詳細は11月下旬に公開される予定です。
まとめ -Azure OpenAI Serviceを導入するメリット-
日本マイクロソフトは10月23日に法人向け生成AIの取り組み状況についての説明会を開催しました。同社の「Azure OpenAI Service」の導入が国内で560社以上となっていることを報告しました。生成AIの活用ポイントとして、多様な「Copilot」サービスや3階層モデルに基づくAI導入、データ保護のスタンスなどが詳しく紹介されました。また、新たな事業化支援プログラムの開始も発表されました。
日本マイクロソフトの報告にもある通り、昨今はChatGPTを始めとした生成AIは、多くの企業や自治体で導入されています。10月22日時点で88箇所の自治体で生成AIの導入や実証実験、ガイドライン策定が行われています。
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企業や自治体で生成AIを導入する方法として以下のようなパターンが考えれれます。
- 自社独自のLLM(大規模言語モデル)を開発する
- ChatGPTなどの対話型生成AIサービスを直接利用する
- 生成AI基盤のSaaSを利用する
- 生成AIのAPIを利用したシステムを開発する
- クラウドを経由してAPIを利用するシステムを開発する
その中でも、⑤にあたるAzure OpenAI Serviceは、OpenAI APIよりもセキュリティやカスタマイズのし易さ、安定性などの観点で優れた機能を持っています。
Azure OpenAI Serviceを使用すれば、Azureの環境内で専用のGPTサーバーを構築することができます。入力するプロンプトは外部に送信されず、社内のネットワーク内のみで取り扱うことができるため、セキュリティの面からAzure OpenAI Serviceが有効だと考えられます。
また、Azure OpenAI Serviceのカスタムモデル機能を使用すると、GPT-3.5やGPT-4に特定のプロンプトやその応答を追加することができます。これにより、システム独自の知識を持つチャットボットを容易に作成できます。
このように、Azure OpenAI Serviceによる生成AIの導入はセキュリティ面・安定面で非常に有用と考えられます。
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