NRIセキュア 情報セキュリティ実態調査を公開 日本の生成AI導入率は2割弱に

NRIセキュアテクノロジーは、1月25日に日本、アメリカ、オーストラリアの企業を対象に情報セキュリティに関する実態調査の結果を公開しました。

今回の調査は2023年8月から9月にかけて実施され、生成AIの導入状況についてもリサーチされています。

参考:NRIセキュアテクノロジーズ株式会社

アメリカ・オーストラリアと比べて日本の生成AI導入率は低い

調査結果によると、生成AIサービスの導入状況について、「セキュリティルールを整備の上、導入済み」または「整備していないが導入済み」と回答した企業の割合が全体で18.0%で、従業員1万人以上の大企業に限定すると、50%でした。この結果をアメリカ(73.5%)やオーストラリア(66.2%)のデータと比較すると、日本の生成AIサービスの導入率が低いことがわかります。

また、日本では約1割の企業が「利用禁止のため未導入」と答えており、アメリカ(0.9%)やオーストラリア(2.0%)と比べて、生成AIサービスの導入に関して慎重な姿勢がうかがえます。さらに、従業員数が1千人未満の中小企業では「不要のため未導入」という回答が半数近くに上り、生成AIの必要性を感じていない企業が多くなっています。

出典:NRIセキュアテクノロジーズ株式会社

日本では機密情報の入力を禁止するルールが整備されている

生成AIサービスの利用にあたってのセキュリティルールの整備状況に関しても、国による違いが見受けられます。

日本では、「機密情報を入力してはいけない」というルールを設けている企業が59.2%と最も多く、アメリカ(38.4%)、オーストラリア(31.6%)を上回っています。

一方、アメリカでは「利用時の承認プロセスを整備している」ことが61.6%の企業で報告され、オーストラリアでは「定期的に利用しているサービスを確認している」と回答した企業が51.0%にのぼります。

日本では、ガイドラインの策定などが活発に行われていますが、他国ではユーザーの判断に基づくルールだけでなく、監視・統制システムなどの利用環境整備が重視されている傾向があります。

出典:NRIセキュアテクノロジーズ株式会社

日本の生成AIサービス導入率を高めるために

日本企業で生成AIサービスを利用禁止割合が高い理由として、伝統的なビジネス文化の影響が大きいと考えられます。日本企業は一般的にリスク回避的であり、新しいテクノロジー導入に際しては慎重なアプローチを取る傾向があります。

この課題を解決するには、社内で生成AIに関する教育プログラムを実施し、技術の基本知識と利用メリットを従業員に広めような教育や研修の強化や生成AIの利用に伴うリスクを特定し、それに対処するための包括的なガイドラインを策定し、企業全体のリスク管理体制を強化といったアプローチが挙げられます。

実際に社内イベントや業務効率化に役立つツールを奨励することで、生成AIの利活用促進している事例が多くあります。

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また、日本企業が他国と比べて生成AIの必要性を感じていない理由の一つとして、既存の業務プロセスが確立されており、新しい技術を導入することで生じる変化への抵抗感が存在することがあります。また、中小企業の場合、経営資源の制約から新技術の導入が後回しにされることも一因となっています。

この課題を解決するには、生成AI導入によるコスト削減や収益増加の具体的な数値などのメリットを提示することや、各企業の特定のニーズに合わせてカスタマイズされた生成AIソリューションを構築するといったアプローチが挙げられます。

実際に、社内で汎用的な生成AIシステムや特定の業務に特化した生成AIシステムを導入して業務効率化を実現している事例もあります。

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これらの手段を通じて、日本企業が生成AIのような新しい技術の積極的な活用が期待されます。

まとめ

NRIセキュアテクノロジーは、日本、アメリカ、オーストラリアの企業を対象に生成AIの導入状況について調査結果を公開しました。

日本企業の生成AI導入率は他国に比べて低く、利用禁止している場合や必要性を感じていない傾向も見られます。これを改善するためには、生成AIに関する教育の強化や具体的なメリットの提示、特定のニーズに合わせた生成AIツールの構築などが求められます。