今回は、セガサミーホールディングス株式会社で社内の生成AI利活用推進に取り組む、ITソリューション本部 プラットフォーム部 ユーザーサポート課の石森さんにインタビューを行いました。
生成AIがもたらす競争力の向上や、Azure OpenAI Serviceの利用、社内情報を活用した生成AIの効果、など、生成AIの導入を検討されている方にとって大変参考となるお話をいただきましたので是非ご覧ください。
プロフィール
セガサミーホールディングス株式会社 ITソリューション本部 プラットフォーム部 ユーザーサポート課
石森 拓郎さん
生成AIを有効に活用しないと競争力が低下するリスクがある
Q:生成AIを社内に導入した背景を教えてください。
石森さん:昨年11月頃にChatGPTがリリースされたと思いますが、今年に入り注目が集まっており、現場からも積極的に活用したいという意見が多くなっていました。それと同時に、弊社の経営層や社長を含め、リスクはあるものの、それに怯えずビジネスでの使用を推進する方針を固めました。IT部門としては、業務に大きな影響があると見ており、積極的に使用する方向で、社内でのリスクを避けながらの使用方法を検討し始めたのは、おおよそ2月や3月のことです。
また、生成AIはビジネスにおいて非常に大きなインパクトを持つと考えており、有効に活用しないと、ビジネスの競争力が低下するリスクがあると認識しています。
社内の既存環境と親和性の高いAzure OpenAI Serviceを利用
Q:生成AIの中でも「Azure OpenAI Service」を利用している理由を教えてください。
石森さん:私たちはMicrosoft 365を活用しており、コミュニケーションと業務の両方にOffice 365を使用しています。Azure OpenAI Serviceは、特にOffice 365やPower Platformと高い親和性があると感じています。API連携やPower Automateとの統合も考慮すると、Azure OpenAI Serviceの親和性はさらに際立ちます。これらの理由から、現在はAzure OpenAI Serviceを主に使用しています。
社内情報を学習させた生成AIを活用
Q:社内では具体的にどうのように生成AIを活用されていますか?
石森さん:もともと社内向けに提供していたのは、TeamsのチャットbotでChatGPTとして使えるようなもので、通常業務のアシスタントとして活用していました。そこから他社と比べてもかなり早い方だとは思うのですが、社内のイントラネット情報を学習させて、社内にある例えば規程類だったり、申請手順などを簡単に出力できるようにしました。
簡単な資料作成や帆酷暑の作成、翻訳など結構通常業務、いわゆるChatGPTの使い方としてよく出てくるものだと思いますけど、そのような活用方法がメインです。あとは一部の開発現場で、キャラクターであったり画像を自動的に生成したり、プログラムをGitHub Copilotを使ってある程度自動化を進めていたりしています。
通常業務の20%効率化を目指す
Q:生成AIの導入による具体的な業務時間短縮などの効果は出ていますか?
石森さん:現段階ではまだ具体的な測定ができていないのですが、今後現場に展開していく際には、通常業務の約20%の効率化を目指しています。少し抽象的な表現になってしまいますが、展開する際には現在どれくらいの時間がかかっているかを測定し、AIを活用することによってそのうちの約20%の時間を短縮する予定です。これは一旦の目標で、実際に活用してみて、より具体的な数値を上げることができればと考えています。
今後はより具体的なガイドラインを作成予定
Q:御社は生成AIのガイドライン策定について教えてください。
石森さん:弊社は比較的早い段階でガイドラインを作成しました。だいたい今年の3月下旬からです。その時点でのガイドラインは、注意事項に近いレベルの基本的な内容でした。例えば、生成された内容に対する最終的な人間による確認の重要性、特にハルシネーションの問題を含めてです。
このガイドラインには、一般的な情報が多く含まれています。例えば、生成AIが回答を提供する可能性、ファクトチェックの重要性、最終決定は人間が行うべきであることなどです。また、著作権に関する注意や、ChatGPTに入力された情報が学習されるための注意点も含まれています。
現在、知財部や開発部と協議を行いながら、特に開発面での利用範囲について様々な議論を行っています。これらの議論を基に、より具体的なガイドラインを作成する予定です。
生成AIに関する社内教育の取り組みにも力を入れている
Q:生成AIの導入にあたって社内教育の取り組み等はありますか?
石森さん:弊社では、生成AIに関する社内教育にも力を入れています。特に今年からは、社内イベントを多く開催しており、社外の専門家を招いたり、社内の事例を紹介したりしています。また、最近ではよく使われるプロンプト集をリリースしたり、プロンプトの使い方を解説する5分程度の動画を制作し、月に2回ほど社内で共有しています。このような取り組みは、社員が生成AIを効果的に使いこなすことに重点を置いています。
進んだ生成AI導入の背景にある「チャレンジ精神」の社内風土
Q:最後に、今回お話を伺ってかなり他社と比べて生成AIの導入が進んでいると感じたのですが、その理由は何だと思いますか?
石森さん:当社には約6000人の従業員がおり、そのうち約2000人弱、大体3割程度が、先ほどお伝えしたチャットボットなどの生成AIを活用しています。また、開発部門でも利用が始まっており、従業員の約4割が何らかの形で生成AIを活用していると思います。生成AIの利用に対する温度感は非常に高く、全役員も積極的に使うべきだという認識を持っています。会社全体としても、生成AIの利用に積極的な姿勢を取っています。
会社の文化や風土は、チャレンジ精神と積極性に富んでおり、生成AIに関しても、新しい取り組みに対しては非常に取り組みやすい環境があります。否定的な意見はほとんどなく、チャレンジに対しては支援を受けやすい環境が整っている点は弊社の特長であると感じています。