生成AIを活用した飲食店向けの支援サービスを提供 株式会社シンクロ・フード

飲食店ドットコム」や「グルメバイトちゃん」「農業ジョブ」を運営する株式会社シンクロ・フード様にお話を伺いました。

プロフィール

大久保 俊氏

2008年に株式会社シンクロ・フードに入社。飲食店ドットコム、求人飲食店ドットコムなどのWebサイト開発・運用を担当。
2015年4月 執行役員開発部長、2018年6月に取締役に就任。
2022年より、新規事業であるグルメバイトちゃんの立ち上げや、GPTプロジェクトチームを推進中。

「物件登録AIアシスタント」で店舗物件の登録作業を簡略化

Q:生成AIを活用した飲食店向けの支援サービスを提供されていると聞きましたが、生成AIをサービスや業務に導入するに至った背景や目的を教えてください。

A:私たちの生成AIに関する取り組みは、生成AIのチャットUIがリリースされた後に、この技術が非常に優れていると認識し、私たちの業務や飲食店を運営している方々に活用できないかと考え、プロジェクトが発足したところから始まりました。

これが2023年の4月頃だったと思います。また、目的としては社内業務や飲食店の業務改善、そして周辺事業者さんへの提供といったところです。

Q:現時点では生成AIをどのように活用しているのか具体的に教えてください。

A:サービス内で機能として生成AIを活用したりしています。例えば、「物件登録AIアシスタント」という機能は、飲食店ドットコムという弊社のサービス内で、不動産会社が店舗物件を登録する際に、GPTを活用してその作業を簡略化するものです

これは飲食店向けではなく、不動産会社向けのものですが、今後飲食店に向けてもこうした技術を提供する機会を増やしていきたいと考えています。
これについて、現状ではポジティブなフィードバックをいただいており、期待は高いです。

物件情報の載っている紙「マイソク」をアップロードするだけで適切に情報が入力される

Q:サービスの改善をされたと思いますが、改善できた点として一番大きなものを教えてください。

A:精度ですね。例えば、これは物件情報の機能についてですが、不動産会社の窓に貼ってある「マイソク」という紙をご存じですか? 物件の賃料や間取りなどが載っている紙のことです。

その「マイソク」ですが、結構多くの情報が含まれています。そのため、賃料や住所といった情報を、今までは手入力で登録していましたが、それは非常に大変な作業でした。そこでOCRでテキスト化し、そのデータをGPTが理解して、賃料かどうかを判断して入力するという仕組みを作りました

具体的には、OCRを使ってテキスト化し、それを元に物件情報を抽出するのですが、これはGPTを使わずにGoogleのVision AIを使っています。OCRで得られたテキストは乱雑なことが多く、その中から人間が理解できる情報を抽出します。

例えば、1000万円と書かれていれば賃料ではないとわかりますが、20万円台であれば賃料だと判断できる、といった感じです。

今回、GPTを活用することで、OCRされたテキストから物件情報を抽出し、JSON形式で返すことが可能になりました。住所が分割された場合でも、それをつなげて正しい住所として認識するなど、GPTによって精度が大幅に向上したと感じています。

Q:「GPTプロジェクトチームを作りました」というリリースを拝見しましたが、このチームはどのような経緯で立ち上がり、どのような取り組みをしているのかを教えてください。

A:このプロジェクトチームは2023年4月からスタートしました。このプロジェクトチームでは、GPTを活用できる分野を探し、業務やサービスに適用していくことを目的としています。

具体的には、先ほどお話しした物件登録機能のようなものがその一部であり、他には求人サービスでの職務経歴書の自動生成や、社内向けのGPT活用法の教育なども行っています。

社内のナレッジに対してチャット形式で質問できるチャットボットを制作

Q:社内での生成AIの活用について、どのような取り組みが行われているのかをおしえてください。

A:社内での生成AIの活用はまだ積極的には進んではいませんが、社内のナレッジに対してチャット形式で質問し、答えを返す自社用のRAGのようなシステムを作ったりしています。

また、RAGはまだあまり活用されていませんが、問い合わせ対応にはGPTを活用しています。GPTが初期の回答を作成し、最終的な返答は人間が調整するという形です。業務に特化した情報というよりも、社内ナレッジ全般を対象にしています。それ以外にも、社内での生成AI活用に関するさまざまなプロジェクトに取り組んでいます。

生成AIを活用して飲食業界の人手不足を解消したい

Q:サービスやプロダクトの部分で、今後の飲食業界に向けて何か展望があれば教えてください。

A:生成AIを活用して、飲食業界の人手不足を解消できるような取り組みを進めたいと考えています。しかし、調べた結果、現状では厳しいかもしれません。なぜなら、飲食業界のDXが進んでいないという前提があるからです。


現時点では、まずは不動産会社や求人サービスなど、飲食業界に間接的に貢献できる業界に対してサービスを提供することを考えています

Q:社内での生成AIの活用に関して、何か展望があれば教えてください。

A:生成AIを積極的に業務に活用していきたいと考えています。エンジニア部門では既に利用が進んでいますが、今後は営業部門や間接部門でも生成AIを活用し、業務効率をさらに向上させる予定です。

例えば、ドキュメント作成や資料作成のサポートを生成AIに任せることで、日常的な業務をより効率的にすることを目指しています。また、生成AIのトレーニングデータの整備にも力を入れていく予定です。より正確で有用な生成AIの機能を実現するために、良いデータの提供を強化していく予定です。

Q:一通りお話をお伺いできたと思いますが、今までの内容で何か補足があればお願いします。

A:プレスリリースでご紹介した「求人@インテリアデザイン」というサービスも、GPTプロジェクトの一環としてリリースしています。これらのサービスを通じて、まずはGPTを活用できる範囲を広げているということをお伝えしておきたいです

また、飲食業界への直接的な適用も考えていますが、現在はまず他のサービスでGPTを活用しているという点をご理解いただければと思います。