リスクばかりではなく、享受できるメリットに目を向けた生成AI導入 株式会社コムニコ

今回は、SNS運用代行やコンサルティング事業を展開する株式会社コムニコの新規事業開発室の山下さんにお話を伺いました。

SNSの投稿作成業務における生成AIの活用についてや、活用した結果の業務効率化、ガイドラインの作成についてなど、生成AIの活用・導入を考えている方にとって貴重なお話いただきましたので、ぜひご覧ください。

プロフィール

山下 周作さん

広告会社での営業を経て、2018年にコムニコ入社。SNSコンサルタントとして数多くの企業のSNSマーケティング支援に従事。アカウント立ち上げから戦略策定、広告プランニング、レポーティングによる効果検証など、業務領域も幅広く担当しマネージャー就任。その後、2023年から現職の新規事業開発室に所属。

業務効率化や品質の向上を目的に生成AIを導入

Q:生成AI導入の背景について教えてください。

GPT-4がリリースされた時期、今年の3月か4月頃のことですが、その時点でAIに対する需要が顕著に高まっていることを強く感じました。実際、弊社の代表からも、この分野への注力を求める指示が出されました。これを受けて、各部署を横断したPJチームを発足し、積極的に動き出しました。生成AI活用の目的としては、業務効率化、資料作成補助やコンテンツ制作、そしてクリエイティブの品質を高めることに置いています。

現在、私は新規ビジネス開発室という部署に所属しており、新規事業の立ち上げや全社員を対象としたサービス導入など、幅広い業務に携わっています。生成AIの社内導入に関して、チーム内で各メンバーがキャッチアップした最新情報を共有しながら、社内導入に向け活動しました。

叩き台としての画像生成AI利用や、ChatGPTによる要約・校正

Q:具体的に生成AIをどのような業務で活用していますか?

弊社は、アカウントの運用代行やコンサルティングを始めとするSNSマーケティング支援を提供しているため、例えば、X(旧:Twitter)やInstagramなどで投稿するテキストをChatGPTで生成しています。また、最終的なアウトプットとして直接使用するわけではありませんが、AIで生成した画像を初期の叩き台として利用し、そこからさらに改良を加えて最終的なアウトプットを作成しています。他にも、文章の要約や校正作業などにも活用しています。

一人当たり年間376時間の業務削減見込

Q:生成AIの活用による工数削減等の効果は行っていますか?

弊社には「コミュニティマネジメント」という、SNS投稿のクリエイティブ企画・制作を担当するチームがあります。このチームでは、各業務にかかる工数を計測し、生成AI活用による削減率を追っています。元々の目的は全社ベースでの工数削減と業務効率化ですが、業務内容によっては定量的な効果測定に難しさがあります。また初期コストがかかってしまうと、結果としてメンバーのモチベーションが低下し、正確な測定ができないことが考えられます。そのため、まずはコミュニティマネジメントチームだけで効果を測定し、その結果をもとに、将来的には測定範囲の拡大や標準化を図るという流れで考えています。

また業務内容により異なりますが、同チームではAI活用による業務時間の削減率を平均して30%前後計測できています。この結果から、AI活用による一人当たりの作業時間は年間376時間削減できる見込みとなっています。

今後は全体の利用率を高めつつ、ヘビーユーザーの割合を増やす

Q:社内の生成AIの利用率について教えてください。

利用率に関しては、6月に実施したアンケートでは約7割の社員が利用していたのですが、今はその数字が徐々に落ち込んでいるように思います。

特に積極的に活用しているヘビーユーザーは、全体の2割から3割程度でしょうか。初期段階では多くの社員が試してみて便利だと感じていたようでした。しかし時間が経つにつれて、より深く理解し積極的に活用するヘビーユーザーがいる一方で、時々使う程度か、完全に利用をやめてしまった状態のユーザーも増えている印象です。そのため、全体の利用率を高めることと、ヘビーユーザーの割合を増やすことの2軸が、今後の課題です

リスクばかりを恐れず、享受できるメリットに目を向ける

Q:生成AIの導入にあたってガイドラインを作成されたようですが、意識したことなどはありますか?

ChatGPTが急速に注目されたとき、生成AI利用に伴うリスクが騒がれましたが、社内導入に際し代表からは、そうしたリスクだけに過剰に囚われないようにと言われていました。そのため考えられるリスクは把握し、必要な対策を取りつつも、積極的に生成AIを活用できるような方針で作成しています。情報漏えいのリスクなどは、多くの企業が気にしているポイントだと思います。ただ、生成AIだけでなく、どんなツールにもリスクは伴うため、リスクばかりを恐れず、享受できるメリットに目を向け、先進的な技術を活用してほしいなと思っています。

AIを上手く活用できる人材の育成が重要な課題

Q:最後に、今後の生成AIの社内活用の展望について教えてください。

少し繰り返しになりますが、まずは社内での生成AIの利用率を高めることが目標です。さらに、ヘビーユーザーには活用度を高めて、より高いレベルのアウトプットを生み出してもらうことが重要だと思っています。もし業務毎に属人化したノウハウがあるのであれば、それを集約し標準化することも目指しています。

生成AIの普及により、特定業務においては圧倒的に業務効率化が進んでいます。ただ現状AIに丸投げという業務はなく、どこかで必ず人の介在が必要な場面があるので、効率化できる部分は徹底して効率化し、同時にディレクションや確認作業など人の介在が必要なポイントを見極めていくことが必要です。また、そうした状況でAIを上手く活用できる人材の育成が、今後の重要な課題だと思っています。