求人掲載の文章作成にかかる工数を約40%削減 現場の声を取り入れた生成AI導入 Yamasakiさん

今回はフリーランスとして、生成AIを用いたプロダクト改善や業務効率化のプロダクトマネージャーを行っているYamasakiさんにお話を伺いました。

「工数削減可能性が高いかつ生成AIで効率化出来そうな部分を発見する」プロセスについてなど、生成AIを導入するにあたってのPoC開発から検証について、大変貴重なお話をいただきましたのでぜひご覧ください。

プロフィール

Yamasakiさん

京都大学大学院 情報学研究科にて、深層学習の研究に従事。新卒にて上々不動産系IT企業にて、間取り図の自動認識サービスのAIモデルの開発や、データ分析業務に従事。2022年4月からフリーランスとして独立。ニュースアプリの記事推薦システムのPMや、データ基盤立ち上げの設計・実装を担当。最近は、生成AIを用いたプロダクト改善や業務効率化のプロダクトマネージャー。業務コンサル的な立ち位置からプロダクトの実装までできるので、爆速でのPoCを回すことが得意。

工数削減可能性が高いかつ生成AIで効率化できそうな部分を見つける

Q:今回の生成AIによる業務効率化プロジェクトの概要について教えてください。

Yamasakiさん:結論としては、まずは課題感の大きい工数削減の可能性が高い業務部分を特定し、次にその中で生成AIによる効率化が見込める部分を見つけ出します。これらの重複する部分に焦点を当て、最初のステップとして解決に取り組むことで、生成AIを用いた業務効率化プロジェクトをスムーズに進めることができるというのが全体の計画です。

当プロジェクトでは、採用ポータルサイトを運営する企業の支援を行い、掲載企業の採用文書を代行して作成する業務を担いました。具体的には、取材班が掲載企業の情報をインタビューを行って収集し、ライターがそれを記事化する流れです。

この業務は一見そこまで大変に思えないかもしれませんが、社内ルールの遵守、文字数制限、誤字脱字のチェック、景品表示法のガイドライン遵守などのため、3時間以上かかることもあります。また、他の求人サイトの文言を使うリスク回避のため、異なる表現で文章を書き換える必要があり、これらのルールによって作業工数が大きくなっていました。

実際に現場を視察してどの部分に生成AIを導入すればよいのか決定

Yamasakiさん:これを改善するためのアイディアとして、様々な提案があります。例えば、文章の見出しを自動生成することや、さまざまな文章スタイルでの生成、細かいガイドラインのチェックをAIで行うことなどが挙げられます。多くのアイディアがありますが、結論として今回のプロジェクトでは、現場に行き、管理メンバーからのヒアリングを行い、その次に実際の業務を視察しました。その上で、どの部分を生成AIで効率化するのかを定義するという流れで進めました。

現場で得られた情報をもとにMVPを作成

Q:実際に現場に行って業務を視察したうえで、どのようなサービスを作成したのですか?

Yamasakiさん:現場で実際に分かったことは、求人掲載作成の業務で時間がかかる主な要因として、取材の情報が不足しているために、追加情報を参考サイトから調査する作業が時間を要していました。また、文書の言い換え作業も、ベテランであっても、うまく表現を変えることに苦労している様子がありました。文章を作成した後、その順序や語尾を何度も変更していることが多く、限られた文字数にうまく情報を詰め込むための工夫に時間がかかっているようでした。

生成AIで効率化できそうな部分としては、表現の正確性の担保、Webサイトからの情報取得、リライトの部分が挙げられます。そこを初期スコープとして、MVP(最小実行可能製品)の作成を行いました。

具体的な昨日としては、取材シートの情報や他店舗の参考情報を利用するものです。ユーザーはフォームにこれらの情報を入力し、事前に用意されたプロンプトに基づいて、入力された情報が適切な場所に自動で挿入されるようになっています。このプロセスを通じて、文章を作成できるチャットUIのツールを構築しました。

全体で約40%の工数削減

Q:サービスの導入による業務効率化の効果について教えてください。

Yamasakiさん:効果検証の結果、A:勤続年数が短い社員の場合は工数を50%以上削減でき、B:勤続年数が平均的な社員は30%、C:勤続年数が長い社員の場合は40%以上の削減が可能でした。BよりもCの方が工数削減効果が高かった理由は、Cが多数の案件を扱う際、例えば外部のライターに20件の仕事を発注し、そのチェックをするなどの業務を担当していることにあります。Cは完成した作業物の添削に慣れており、このツールを外部のライターと同様に上手く活用することで、40%の工数削減が可能になったと考えられます。

生成AIに限らず、業務効率化の実現には現場の理解が重要

Q:最後に生成AIの導入について重要なことは何だと考えていますか?

Yamasakiさん:私は、業務を正確に理解することが最も重要だと考えています。今回のプロジェクトでは、管理チームから提供された資料が整っていたため、どの業務フローに生成AIを導入すれば効果的かという仮説を立てることができました。プロジェクトというのは業務改革の一環であると考えていますが、それに留まらず、現場を観察し、要件を定義することが不可欠です。

今回のMVPの開発スピードが速まった主な要因は、管理チームや現場からの要望をただ聞くだけでなく、現場の作業を俯瞰して「業務を遅くする真のボトルネックはどこか」「そのなかでAIで解決可能な部分はどこか」を突き止め、チーム全体で合意できたことです。現場の観察と理解は、生成AIに限らず業務効率化の文脈で重要だと考えています。