今回は韓国国内において100万以上のユーザーを抱える、韓国の生成AIリーディングカンパニー、「リートンテクノロジーズ」の日本事業を統括する金起漢さんにお話しを伺いました。
韓国トップの生成AI企業のサービスの強みや、生成AIについてユーザーに学んでもらうプロンプトソンという取り組み、生成AIによって今後社会がどのように変わるかなど興味深いお話を伺いましたので、ぜひご覧ください。
追記:2023年11月1日、リートンテクノロジーズは日本法人設立を発表しました。(詳細はこちら)
プロフィール
Wrtn Technologies・Head of Japan
金起漢 さん
ソウル大学でコンピューター工学学士・修士を取得後、LG電子(株)・(株)ネクソン・(株)Kakaoなど日韓のIT業界で25年間エンジニアやビジネス総括として携わってきた。今年韓国生成AI業界のリーディングカンパニーであるリートンテクノロジーズに入社、日本事業を統括している。
Twitterアカウント:https://twitter.com/ken_wrtn
韓国の生成AIリーディングカンパニー「リートンテクノロジーズ」
Q:御社の概要について教えてください。
金さん:元々は韓国で創業し、現在は2年半が経過しています。実は、弊社ではかなり早い段階から、具体的には去年の1年以上前から生成AIの研究開発を行っていました。
現在は100万ユーザーを抱えており、生成AI業界において、弊社が韓国でのリーディングカンパニーの一角を担っていると考えています。6月には16億円の資金調達に成功するなど、多くの実績を積み重ねてきました。
多様な生成AIモデルが利用可能なAIプラットフォーム「wrtn」
Q:御社の生成AIサービス「wrtn」の特徴について教えてください。
金さん:弊社サービス「wrtn」の特徴として、チャットインターフェースを利用して、様々な形のコンテンツ生成が可能です。「wrtn」の特徴としては、OpenAI社のGPTを利用するだけでなく、画像生成にはstability ai社の「Stable Diffusion」モデルを使用しています。
さらに、日本と韓国のユーザー向けには、LINE社の「HyperCLOVA」モデルも組み合わせて使用しています。これにより、世界中の多様な生成AIモデルを組み合わせて、さまざまなコンテンツの生成が可能になっています。
コンテンツ生成だけではない生成AIの可能性
金さん:ただ、弊社の視点としては、生成AIがコンテンツ生成のみに限定されるべきではないと考えています。この視点から、今年の6月にさらなる発展を目指しました。
当初はコンテンツ生成やチャットプラットフォームの開発でしたが、その後、スタジオ環境とプラグイン技術との二つの新しい領域にも取り組み始めました。
ノーコードで生成AIを活用したツール作成ができる「スタジオ環境」
金さん:スタジオ環境によって、企業は生成AIを利用したアプリケーションの作成や要件定義の組み込みが容易になります。このツールの魅力は、専門的な知識やコーディングスキルがなくても、生成AIを活用したツールやアプリケーションをノーコードで作成できる点です。
単一のサービスだけでは各ユーザーの多様な要求に対応するのは難しいと考えています。多様なニーズに対応するためには、ユーザー自身が生成AIを活用したツールを作成できる環境の提供が必要だと考え、その方向でサービスを展開しています。
より生成AIを日常生活に役立たせるプラグイン技術
金さん:弊社は生成AI技術によるコンテンツ生成も素晴らしいと考えていますが、生成AI技術をさらに日常生活と結びつけることができないかという考えを常に持っています。
例として、生成AIに「六本木までどれくらいで到着するか?」という質問をした場合、通常の生成AIでは単なる返答のみが返ってきます。
しかし弊社のプラグイン技術によって、例えばタクシー会社と連携し、実際にタクシーを呼び出せるレベルまでのサポートを提供することを目指しています。
韓国は現在、20の韓国企業と連携してサービスを提供しており、金融やファッションの業界など、様々な分野での提携パートナーとともにサービスをローンチしています。
ユーザーの意図をくみ取る「AIエージェント技術」
Q:御社の今後の展開について教えてください。
金さん:弊社が特に力を入れている技術は「AIエージェント技術」です。例えば、「六本木までどれくらいかかる?」といった質問を受けたとき、最も重要なのはユーザーの意図を正確に理解することです。
具体的には、ユーザーが「ここに行きたい」と直接言及していなくても、その意図を捉えてタクシーを呼ぶといった行動を取る能力が必要です。ユーザーの意図を理解した結果、複数あるプラグインのうちからタクシーを呼ぶためのプラグインを引っ張ってくることができるのです。
弊社のこのAIエージェント技術に、各社と連携したプラグイン技術を加えて、より日常生活に役立つような、ユーザビリティの高いサービスを実現したいと考えています。
ユーザーに生成AI体験を提供する「プロンプトソン」
Q:生成AIを体験してもらう活動「プロンプトソン」について教えてください。
金さん:生成AIを効果的に利用していただくためには、ユーザーに生成AIがどのようなものであるかを一定程度理解してもらう必要があり、単にプロダクトを販売するだけでは十分ではないと考えています。
「プロンプトソン」は「プロンプト」と「ハッカソン」の言葉を組み合わせた造語で、生成AIに興味がある方であれば、誰でも参加可能です。実際、参加者の中にはプログラマーはほとんどおらず、さまざまな業種の方々が参加しています。参加者は生成AIを用いたアプリケーションを作成します。たとえば、ECサイトのレビューへの返信を自動生成するアプリケーションが一つの事例です。
別の例として、金額を入力すると相続税を計算するアプリケーションもあります。これは税理士の方が作成したもので、ビジネス知識と生成AIの知識を組み合わせて作られました。このような生成AIを活用してサービスを作り上げるという体験を提供することを目的としております。
生成AIを適切に活用できる人材が生き残る
Q:最後に、生成AI技術によって今後社会がどのように変わると考えていますか?
金さん:サービス提供者の視点から見ると、将来的には先ほど説明したようなAIエージェント技術が増え続け、日常生活にも生成AIが深く関わって便利になるような時代が到来するのではないかと考えています。
一方で、生成AIが仕事を奪ってしまうのではないかという懸念も確かに存在しています。サム・アルトマンもこのような質問を頻繁に受けることがあると思います。彼の考えとして、一部の仕事は確かになくなる可能性があるというものです。
しかし、その一方で新しい仕事や職種が生まれるとも考えています。我々もこれに同意し、生成AI技術を適切に活用できる人材が生き残ると考えています。一方で、技術の活用ができない場合、その仕事は失われる可能性があると予測しています。
追記:2023年11月1日、リートンテクノロジーズは日本法人設立を発表しました。(詳細はこちら)
今回インタビューにご協力いただいた金起漢さんは次のようにコメントしています。
今年4月からすでに日本に進出し事業を展開しているリートンテクノロジーズにとって、この度の日本法人設立は日本市場に対する強い意志であり、顧客である企業や一般ユーザーに対する約束の表れです。ノーコードで自社データを学習させることができる法人向けChatGPT活用ツール 「リートン・スタジオ」 を今後公開し、企業の業務効率化を支援する予定です。また、日本企業とのパートナーシップ締結を迅速化し 「リートン・プラグイン」 をユーザーに提供するなど、機能の高度化及び提供を加速させる予定です。弊社は、顧客との信頼関係を大切にし、AI技術を通じた革新的な価値の提供に注力して参りますので、今後の活躍にご期待ください。
韓国の生成AIリーディングカンパニーであるリートンテクノロジーズが、今後日本においてどのような取り組みを進めていくのか注目です。