生成AIチャットボットで学生生活をサポート 個別最適化学習の実現へ 武蔵野大学

今回は創立100周年記念事業及び本学DX推進の一環として、生成AIを搭載したICTヘルプデスクチャットボットの導入を開始した武蔵野大学の、DX・システム部DX戦略企画課兼MUSIC事務課 課長の菅原さん、DX・システム部DX戦略企画課 副参事の森さん、そして協力会社であるウルシステムズ株式会社の坂本さんにお話を伺いました。

学生生活をサポートする生成AIチャットボットの実現と、教育分野と生成AIについて興味深いお話を伺いましたのでぜひご覧ください。

武蔵野大学について

1924年に仏教精神を根幹にした人格教育を理想に掲げ、武蔵野女子学院を設立。武蔵野女子大学を前身として、2003年に名称を武蔵野大学に改名し、2004年に男女共学化。現在は12学部20学科、13大学院研究科、通信教育部など学生数13,000人超の総合大学。

2019年に国内私立大学初のデータサイエンス学部を開設。2021年に国内初のアントレプレナーシップ学部を開設し、「AI活用」「SDGs」を必修科目とした全学共通基礎課程「武蔵野INITIAL」をスタートさせる。

2023年には国内初のサステナビリティ学科を開設。2024年には国内初のウェルビーイング学部を開設する。2024年の創立100周年とその先の2050年の未来に向けてクリエイティブな人材を育成するため、大学改革を進めている。

最初は質問に対してあらかじめ回答を用意するシナリオ型

Q:生成AIを学内チャットボットに導入した背景について教えてください。

菅原さん:私たちの大学ではパソコンやICTに詳しくない学生のために、2019年からインターネットサイト上にICTヘルプデスクの窓口を設けています。この窓口では学生が課題を行ったり、レポートを書いたりする中での疑問や問題点に対応しています。

また、24時間365日の迅速なサポートを実現するため、大学ホームページ上にも様々な案内を載せています。しかし、学生にとっては必要とする情報がどこにあるのかがわかりづらいという問題がありました。それを解消するために、2020年にチャットボットを設置しました。このチャットボットはシナリオ型のもので、質問に対してあらかじめ用意した答えを回答するものでした。

一般的な知識に関する質問にも対応できる生成AI

菅原さん:ただ一般的な知識を求めるような質問、例えば「Google_Meetの使い方がわからない」といったような質問にはシナリオ型では対応しきれず、「これは役に立たない」という声が寄せられることもありました。

同時にチャットボットを運用する職員側も、多くの質問を想定して回答を用意しないといけないため効率的ではないと感じていました。

そんな中で、生成AIが世界中で注目されるようになりました。生成AIを利用すれば学内サイトやWEBなどから学習した情報をもとに一般的な質問を回答してくれるため、先ほど説明したような問題点を解消することができます。

また武蔵野大学は100周年を迎えるにあたってメタバース上にキャンパスを構築するスマートインテリジェンスキャンパス(SIC)の取り組みを行っています。学内のDX(デジタルトランスフォーメーション)を進めるタイミングで、試験的に先ほどのヘルプデスクのチャットボットに生成AIを搭載するプロジェクトが立ち上がったという背景です。

引用:武蔵野大学

学生の人生を左右するような質問にどう対応するか

Q:生成AIをチャットボットに導入するにあたっての課題はありますか?

菅原さん:今後は学生生活全般に関する質問にまで対応範囲を拡大していきたいと考えていますが、課題があります。例えば「卒業するためにはどの科目を取れば良いのか?」といった質問にチャットボットが回答しても、それが履修不可能だったり、学科として履修してはならないケースも考えられます。

チャットボットの回答が原因となり、一つの単位を落とすだけで卒業ができなくなるような状況は、学生の人生に大きく影響します。安全に利用するためにこのような問題をどのように解決すれば良いか、今後の大きな課題としています。

ガイドラインを作成することで今後より生成AI活用を促進

Q:生成AIチャットボットについて学内でのガイドライン等はありますか?

菅原さん:ChatGPTには武蔵野大学で作成したガイドラインが存在しますが、セキュリティが非常に強固なAzure Open AIを基盤としているため、チャットボットに関するガイドラインはまだ確立されていません。

坂本さん:今後の拡大を考えると、学生や教職員の方々のために生成AI利用時のルールが必要になると思います。大学内では、この問題をテーマにした研究会を設け、利用時のマニュアルの準備やルール策定を進めています。これらを活用していくことで、大学内でのChatGPTやAzure OpenAIの利用がさらに促進されるのではないかと期待しています。

武蔵野大学の生成AI活用ガイドライン

引用:武蔵野大学

個別最適化学習の実現のために生成AIは必要不可欠

Q:今後生成AIを活用してどのようなどのようなことを実現したいと考えていますか?

菅原さん:直近数年で、学生が学修や学生生活に関する質問をできるチャットボットの導入を検討しています。また、教員がレポートや課題の採点・評価をする際に、生成AIを利用してコメント提供をサポートするような仕組みもアイディアとしては挙がっています。

現在、国として「個別最適化学習」が強く推進されています。昔は、全員に同じ講義を行い、同じ課題を出し、テストの点数が高い学生こそが優秀とされていました。しかし、現代においては学生一人ひとりの興味や到達度に合わせた教育が要求されています。

このニーズに応えるため、そしてそれが世界的なトレンドとなっている中、個々の学生に合わせた教育を提供するためにはAIの活用が欠かせません。そのため、大学の進展においてもAIの導入は不可欠だと考えます。

森さん:ChatGPTは基本的に一般的なタスクにのみ対応していますが、「学修コンシェルジュ」のように学生に合わせカスタマイズされたものにどれだけ使えるのか、その点に関してチャレンジしてみたいと思っています。

坂本さん:今後、単純な作業はAIに任せることができるようになってくると思います。そうなると、学生は「どう考えるか」「どう発想するか」に重点を置くことがより重要になります。単純作業を生成AIが効果的にこなす中、初等教育から、AIの活用方法を考えていくような教育スタイルの変化により、発想力の強化、改善が図れていくのではないかと考えています。