学習データを生成AIに与える「AIトレーナー」 米ユニコーンScale AIで働く市川淳さんにインタビュー

今回は米国のユニコーン企業(評価額10億ドル以上・設立10年以内の未上場ベンチャー)Scale AIで、AIに対して質の高い学習データを提供する仕事「AIトレーナー」として働く市川さんにインタビューをしました。

※Scale AI・・・データラベリング(データにタグやカテゴリを付ける作業のこと。AIの学習のために、例えば画像に「犬」「猫」などのラベルをつける。)を行った高品質なAIトレーニングデータを、OpenAIやstability.aiなどの企業に対して提供する米国のユニコーン企業。

引用:Scale AI

生成AIの普及によって今後増加することが予想される新しい職種「AIトレーナー」についてや、生成AIで今後社会がどう変わるかなど、興味深いお話を伺いましたので、ぜひご覧ください。

プロフィール

市川淳さん

2022年3月に大学の数学科を卒業後、短期間外国での仕事経験を積む。帰国を経て、Scale AIにてChatGPTや生成技術のプロジェクトに参画。

2023年1月より、日本のIT企業でソフトウェアエンジニアとして社内SNSの開発をリードしており、並行してシフトAIの運営にも携わる。

質の高いデータを生成AIに学習させる「AIトレーナ」として働く

Q:市川さんはScale AIでChatGPTや生成AI技術のプロジェクトに参加しているようですが、具体的にどのような仕事を行っているんですか?

市川さん:Scale AIは、オープンAIのパートナーとして活動している会社で、主にAIを開発するために必要なデータを提供する役割を持っています。

私の職業はAIトレーナーと呼ばれているんですけど、高品質のデータを作成してAIに提供することが仕事です。具体的には、大学時代に数学を主に学んでいた経験を生かし、数学に関するデータを生成AIに提供しています。

OpenAIも先日AIに学習させるための専門家チームのメンバーを募集しており、今後AIトレーナーという仕事は増えていくと思います。

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参考:OpenAI

高精度のデータをAIに提供する

Q:AIトレーナーの仕事をする上で重要視していることは何ですか?

市川さん:私が特に意識している点は、正確なデータを提供することです。間違いのないデータを与えることが非常に重要です。インターネットから取得した情報よりも、人間が直接提供したデータの方が回答結果への影響が大きいと感じています。

そのため、その人間が提供するデータに少しの間違いがあると、AIの回答も大きく誤ることがあります。そういったリスクを避けるため、常に高精度のデータを供給することを意識しています。

AIトレーナーの評価方法とは

Q:AIトレーナーの仕事はどのように評価されるんですか?

市川さん:AIトレーナーの評価方法には二つの手法があります。一つ目は、例えば50人がAと答えて、1人だけがBを選んだ場合、そのBを選んだ選択は間違っているよねとみなす方法です。もう一つは単純に、自分のタスクを他の人が評価する方法です。

一つ目の手法は結構面白いと思っていて、私がこの生成結果の方が正しいと思ってAを選んだ場合でも、もしその他大勢の他の人たちがBと答えていたら、私の選択は間違っているされます。その評価方法で一定の基準を満たさないと、プロジェクトから外されることもあります。

生成AIの出力結果において、どちらの答えが正しいのかという判断基準みたいなところは、厳密な基準とは言えないと思うんですけど、非常に重要視されていると感じます。

この評価方法が一概に間違っているとは言えないと思うんですけど、スケールAIはOpenAIにデータをかなり提供しているので、ChatGPTが保守的な発言が多いみたいに言われることが多いところに少なからず関係しているのかと思います。

生成AIがすべてのサービスやプロダクトの基盤に

Q:最後に、生成AIによって今後社会がどのように変わると考えていますか?

市川さん:エンジニアの視点で見ると、ChatGPTや生成AIを基盤に持つサービスが増加していくであろうことが予想されます。生成AIがすべてのサービスやプロダクトの基盤となり、手軽にアクセス可能なものとして存在している未来を想像しています。

一般的な視点から言うと、AIの導入によって失われる仕事がある一方で、同時に新しい専門的な仕事が増えると思います。この状況に危機感を持ちつつ、同時にワクワクもしていますね。