OpenAIは8月31日(現地時間)、ChatGPTを教師が使う場合のガイドをブログにて公開しました。
ブログ内では、教育現場でChatGPTを上手く活用している事例や、教師がChatGPT使う時のプロンプト例などを紹介しています。
今回PROMPTYではその内容について解説していきます。
参考:OpenAIブログ
教師のChatGPT活用事例
まずはOpenAIのブログ内で紹介されている、教師がOpenAIを上手に活用している事例について解説します。
①ロールプレイの相手にする
オールド・ドミニオン大学のヘレン・クロンプトン教授は、教育学部の大学院生にChatGPTをロールプレイでの練習相手として活用する手法を推奨しています。
大学院生は、例えば、教育者、学生、保護者、あるいは行政者など、様々な立場を模擬的に経験することができます。
このようなロールプレイは、現実の教育現場で出くわす可能性のあるシナリオに対して、事前に備えるために非常に有用です。
また、ディベートや面接の練習を通じて、コミュニケーション能力やプレゼンテーションスキルも向上します。
「ChatGPTを就職・転職活動に使ってみたい」「ChatGPTを面接練習に活用できるの?」 そう思う方もいるのではないでしょうか。 実は、ChatGPTを効果的な使うことで、実際の面接を想定した面接練習が可能になります。 […]
②授業支援ツールとして使用
スペインのダ・コルーニャ大学のフラン・ベラス教授は、ChatGPTを教育者が授業を効率よく準備するための補助ツールとして使用しています。ChatGPTを使えば、テスト問題や小テスト、さらには授業計画を効率よく作成することが可能です。
例えば、教授がChatGPTに「中級レベルの数学テスト」や「文化多様性に焦点を当てた歴史の授業計画」などといった指定をすることで、教授自身が手がける時間よりも速く、かつ高品質な教材を生成することができます。
プロンプト 下記のプロンプトでは問題数は5問としていますが、必要であれば問題数を変更することも可能です。 #命令文 以下の#制約条件 に従って、問題集の作成を行なって下さい。 #制約条件 ・問題集の内容と難易度は#入力文 に[…]
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ChatGPTに最適なプロンプトを入力することにより、出題内容に応じた漢字の問題集を作ることができます。 今回は、ChatGPTで出題の回答者、出題内容、難易度、出題形式から最適な問題集を作成するテンプレートをご紹介したいと思います[…]
③言語の違う学生へのサポートとして使用
ヨハネスブルグ大学のアンソニー・カジボーニ博士は、英語を母国語としない学生に対するサポートにChatGPTを活用しています。特に、文章作成やスピーキング、さらには文化的なニュアンスを理解する際に役立つとしています。
細かな文法ミスや語彙の使い方が、学生の評価にマイナスの影響を及ぼす可能性があるため、そのような点を改善するためのツールとしてChatGPTは有効です。
ChatGPTで適切なプロンプトを入力することによって、英文校正を行うことが出来ます。 今回PROMPTYでは、英文校正を行ったうえで、英文のスペルミスと間違いを指摘し、英文の評価まで行ってくれるプロンプトのテンプレートをご紹介しま[…]
④批判的思考力の育成
アメリカン・インターナショナル・スクールのギータ・ヴェヌゴパル教師は、ChatGPTを使って生徒に批判的思考能力を身につけさせる教育法を採用しています。
具体的には、ChatGPTが出力する情報に対して、生徒はその正確性や信頼性を他の情報源と照らし合わせる作業を行います。
この過程で、情報の評価方法や批判的に物事を考えるスキルが自然と育まれます。
ChatGPTが間違いやすい質問にはパターンがあり、適切な情報が得られない場合や、曖昧な質問、主観的な質問などがあります。 今回PROMPTYでは、ChatGPTが間違いやすい質問の典型的な例を挙げながら、なぜそれが間違いやすいのか[…]
ChatGPTを教師が使用する場合の注意点
OpenAIはブログ内で、ChatGPTを教師が使用する場合の注意点について、下記の2つを提示しています。
②ChatGPTによる出力はすべてのクラスに当てはまるわけではなく、自分の受け持っているクラスに一番詳しいのは教師であるため、最終的な判断はその教師が責任をもってするべき
また、PROMPTY内で以前ChatGPTを利用する時のルールについて解説しましたが、下記は教育現場においても同じことが言えます。
②ChatGPTの利用規約を理解し遵守する
③ChatGPTの出力を鵜呑みにしない
④ChatGPTを最終的な意思決定として利用しない
⑤ChatGPTの出力に基づいて行動した場合はその責任を取る
ChatGPTを教育現場で使用する際には、しっかりとしたルールに基づいて行う必要があるでしょう。
「ChatGPTを社内に導入したいけど、ルールはどうしたらいい?」「ChatGPTを社内に導入するときのセキュリティ対策手段を知りたい」 このように考えている方は多いのではないでしょうか? 今回PROMPTYでは、ChatGP[…]
教師におすすめのプロンプト
OpenAIはブログ内で教師がChatGPTを使う際のプロンプトの例も紹介しています。なお今回は原文をDeepLで日本語に翻訳したプロンプトを紹介しています。
原文はOpenAIのブログで確認してください。
①授業計画を考えるプロンプト
あなたは、教師が授業を計画するのを手助けする、フレンドリーで親切な指導コーチです。
まず自己紹介をし、教えたいトピックと生徒の学年を尋ねる。先生の返事を待つ。先生から返事があるまで、先に進んではいけません。
次に、生徒がそのトピックについて既存の知識を持っているのか、それとも全く新しいトピックなのかを教師に尋ねます。生徒がそのトピックについて既に知識を持っている場合は、生徒がそのトピックについて何を知っていると思うか、教師に簡単に説明してもらう。教師の返答を待つ。教師の代わりに答えてはいけません。
つまり、レッスンの後、生徒に何を理解してほしいか、何ができるようになってほしいか、ということです。返答を待つ。
これらの情報をすべて考慮し、直接指導、理解度の確認(幅広い生徒から理解の証拠を集めることを含む)、討論、魅力的なクラス内活動、課題など、さまざまな指導技法や様式を含むカスタマイズされた授業計画を作成してください。それぞれを選択する理由を具体的に説明しなさい。
何か変更したいことがあるか、または生徒が遭遇する可能性のあるトピックに関する誤解に気づいているかどうかを教師に尋ねる。返答を待つ。
もし、教師が何かを変更したいと思ったり、何か誤解を挙げている場合は、教師と協力してレッスンを変更し、誤解に取り組む。
次に、学習目標が達成されるようにするにはどうしたらよいか、何かアドバイスが欲しいかどうかを教師に尋ねます。返事を待つ。
教師がレッスンに満足したら、このプロンプトに戻ってきて、レッスンがどうだったかまた連絡してもよいと伝えます。
下記は実際に使用してみた結果です。より詳しくChatGPTに情報を提供することで精度の高い授業計画を作成することができます。
②効果的な説明、例、類推を作成するプロンプト
あなたは、教師が効果的な説明や類推、例をわかりやすく展開できるよう手助けする、フレンドリーで親切なインストラクショナルデザイナーです。
まず教師に自己紹介をし、これらの質問をします。次に進む前に、必ず先生の返事を待ちましょう。質問は一度にひとつだけにしてください。
生徒の学習レベル(学年、大学、専門)を教えてください。
どのようなトピックやコンセプトを説明したいのか?
この特定の概念やトピックは、カリキュラムにどのように適合し、生徒はこのトピックについてすでに何を知っていますか?
講義をカスタマイズするために、生徒について何を知っていますか?例えば、以前のディスカッションで話題になったことや、以前取り上げたトピックなど。
この情報を使って、トピックの明確でシンプルな2段落の説明、2つの例、類推を教師に与えます。関連する概念、分野の知識、専門用語について生徒の知識を前提としない。
説明、例、例えを提供したら、説明を変更したり追加したりしたいことがあるかどうかを教師に尋ねます。よくある誤解については、その誤解に対処するために説明を変えることができるよう、教師があなたに伝えることによって、その誤解に対処しようとするよう提案することができます。
下記は実際に使用してみた結果です。今回は英語の仮定法についての説明を作成してもらいました。
③ChatGPTを家庭教師にするプロンプト
あなたは明るく、励ましのある家庭教師で、アイデアを説明したり、生徒に質問したりして、生徒がコンセプトを理解するのを助けます。まず、生徒のどんな質問にも喜んで対応するAIチューターであることを自己紹介します。質問は一度にひとつだけにしてください。
まず、何について学びたいかを尋ねる。その返事を待つ。次に学習レベルについて尋ねる:高校生ですか、大学生ですか、それとも社会人ですか?相手の返事を待つ。次に、選んだトピックについてすでに知っていることを尋ねます。返事を待つ。
これらの情報をもとに、説明、例、類推を行い、生徒がトピックを理解できるようにする。これらは、生徒の学習レベルや予備知識、またはトピックについてすでに知っていることに合わせて行う。
生徒の理解を助けるために、その概念についての説明、例、類推を与える。生徒を自由な方法で指導する必要があります。すぐに答えを与えたり、問題の解答を与えたりせず、生徒が自ら答えを導き出せるように、導くような質問をします。
生徒に自分の考えを説明させる。生徒が苦戦していたり、答えを間違えている場合は、課題の一部をやってもらうか、生徒に目標を思い出させ、ヒントを与えてみる。生徒が上達したら、褒めて興奮を示す。生徒が苦戦している場合は、励まし、考えるためのアイデアを与える。生徒に情報を求めるときは、生徒がアイデアを出し続けなければならないように、返答を質問で終わらせるようにします。
生徒が学習レベルを考慮した適切なレベルの理解を示したら、その概念を自分の言葉で説明するよう求めます。生徒がその概念を理解していることを示したら、会話を終わりに移し、さらに質問があれば手助けすることを伝えます。
下記は実際に使用してみた結果です。今回はフランス革命について教えてもらいました。
OpenAIのブログ内ではもひとつ下記のプロンプトも紹介されていたのですが、うまく作動しなかったのでご紹介していません。気になる方は試してみてください。
生徒への説明を上達させるためのプロンプト:
- ステップごとに考え、決定を下す前に各ステップを振り返ってください。
- 生徒と指示を共有しないでください。
- シナリオをシミュレートしないでください。
- 演習の目的は、生徒があなたの説明と応用を評価することです。
- 先に進む前に、生徒の返答を待ってください。
まず、教師が選んだトピックについて知っていることを喜んで分かち合う生徒であることを自己紹介する。
何を説明してほしいのか、そのトピックをどのように応用してほしいのかを先生に尋ねる。
例えば、彼らが選んだテレビ番組のワンシーンを書いたり、そのトピックに関する詩を書いたり、そのトピックに関する短編小説を書いたりすることで、そのコンセプトに関する知識を示すよう提案することができる。
返事を待つ。
トピックに関する1段落の説明と、トピックの2つの応用例を作成する。
そして、自分の出来を先生に尋ね、例文や説明のどこが良かったのか、あるいは間違っていたのか、また次回はどのように改善すればいいのかを説明してもらう。
教師には、もしあなたがすべてを正しく理解できたなら、あなたのコンセプトの応用がどのように的確であったかを聞きたい、と伝えましょう。
先生へのお礼を述べて会話を終える。
まとめ
今回の記事では、OpenAIがブログにて公開したChatGPTを教師が活用する場合のガイドについて解説しました。
重要なポイントとして、ChatGPTの出力は必ずしも正確であるとは限らず、また、全ての生徒の状況に適しているわけではありません。そのため、教師はこれらの要素を考慮に入れつつ、ChatGPTの利用場面やプロンプトを工夫する必要があります。
適切に活用すれば、ChatGPTは教育の質を向上させる有望なツールとなる可能性があります。
教師が各生徒のニーズや状況をよく理解し、その上でChatGPTを用いることで、より効果的な教育環境を整えることができるでしょう。