米国のGoogleは5月10日(現地時間)に、ハイブリッド形式で年次開発者イベント「Google I/O」を実施しました。
今回の講演は、ハードウェアの発表も含まれていましたが、全体としてAIを中心に据えたものでした。オープニングで流れたビデオは、Googleが過去数年間AIの開発に取り組んできたことを示唆しており、「私たちはAIに対して大きな野心を持ちつつ、責任あるアプローチを心がけている」と述べています。その取り組みの基本方針は、「AIを全ての人にとって有益なものにする」とのことです。
会場に最初に登場したCEOのスンダー・ピチャイは、「皆さんがご承知のように、今年はAI分野が非常に盛況であり、私たちにも多くの話題がございます」と、講演を開始しました。
今回PROMPTYでは、2時間20分にも及ぶ主要講演での発表内容を簡潔にまとめていきたいと思います。
1. 大規模言語モデル「PaLM 2」の発表
引用:Google
GoogleはまずAIチャットボットの基盤技術として開発された最新の大規模言語モデル(LLM)であるPaLM 2を発表しました。PaLM 2は100以上の言語に対応し、プログラミングや数学、文章作成などの能力が向上しています。
「PaLM 2」には4つのバリエーションが存在する
PaLM 2には、サイズの異なる4種類のバージョンが存在します。その中には、モバイル端末での利用も可能な小型バージョン「Gecko(ヤモリ)」も含まれています。
デモンストレーションでは、ユーザーがPaLM 2にコードレビューや韓国語でのコメント入力を依頼する様子が披露されました。現在、一部のデベロッパーがプレビューを行っており、他のデベロッパーもウェイティングリストへの登録が可能です。
PaLM 2は、2022年に発表されたPaLMと、2023年3月に公開されたマルチモーダルモデル「PaLM-E」の後継モデルです。
医療分野に特化した「Med-PaLM 2」も登場
引用:Google
さらに、医療分野に特化したLLMである「Med-PaLM 2」も開発されました。これにより、医療に関する質問に対してより正確な回答が可能になります。
Googleによれば、Med-PaLM 2は米国医師資格試験の問題に対して85%の正答率を達成しています。医療分野でのAI利用には倫理的な課題が存在するものの、Googleのピチャイ氏は、Med-PaLMを使用してX線画像の診断などを実現したいと述べています。
2. AIチャットボット「Bard」が世界180カ国で利用可能に
引用元:Google
新たに日本語にも対応
GoogleのAIチャットボット「Bard」は、ウェイトリストの登録の有無にかかわらず、全てのユーザーに公開されます。新たに日本語と韓国語に対応し、英語を使用する場合でも、世界180カ国での利用が可能になりました。
こちらの記事で新しく日本語対応されたBardとGPT-3.5やGPT-4との比較、はじめ方について紹介しています。
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Googleドキュメント・Gmailエクスポート機能などの新機能が追加
Bardでは、出力結果をGoogleドキュメントやGmailにエクスポートできる機能や、ビジュアル検索対応、ダークモードなどの新機能が追加されています。
画像付きの出力にも対応
Bardは検索結果に画像を付けて表示することができるようになりました。デモンストレーションでは、ニューオーリンズのおすすめ観光スポットに関する質問に対し、オーデュボン動物園などの候補をリストアップし、Google画像検索で取得できる写真を表示しました。
引用:Bard
Googleは、Bardがまだ実験的なものであるため、Google検索の代わりとして使用することはできないと述べています。
3. Google検索で活用されるAI「Snapshots」
Google検索では、Search Generative Experience(SGE)という新しい機能をオプトインすることで、特定の検索クエリに対して、検索結果の最上部にAIを用いた回答が表示されるようになります。
Snapshots機能は、必ずしも検索結果に表示されるわけではなく、Googleのアルゴリズムが通常の検索結果よりも有益と判断した場合にのみ表示されます。
政治や健康に関する情報は、AIが誤った情報を拡散するリスクを回避するため、スナップショットには表示されません。Googleは、Snapshots機能は実験的な提供であることを強調しています。
4. GmailやDocsなどのGoogleアプリに生成AI「Duet AI」が導入
今年3月にGoogleは、Workspace向けに「Duet AI」という一連のAI機能を公開しました。これは、Microsoftの「Microsoft 365 Copilot」と近いサービスがGoogle Workspaceで利用できるようになるイメージと言えるでしょう。
「Duet AI」がリブランディングへ
Google I/Oでの発表では、これらの機能が「Duet AI」にリブランドされることが明らかになりました。Duet AIは、Googleの生産性向上アプリケーション向けに様々なAIツールを提供し、Gmailでのメールテンプレート生成、スライド用の画像生成、Meetを利用したミーティング概要文生成などの機能が含まれます。さらに、Googleアプリ間でドキュメント内容を理解し要約し、質問に答える「サイドキック」機能も新たに発表されました。
現地点ではウェイトリストへの登録が必要
ただし、これらの機能は当面「Google Workspace Labs」のテスター向けに提供される予定です。早く使用したい場合はWorkspace Labsに登録してWaitlistに参加する必要があります。
5. Android向け新機能「Magic Compose」
Androidスマートフォンのデフォルトメッセージアプリに、「Magic Compose」という新機能が導入されます。これは受信メッセージに対し、自動的に返信テキストを生成し、ユーザーが書いたかのようにカスタマイズすることができる機能です。また、仕事用の短いビジネス文にも対応可能です。
このMagic Compose機能は、夏ごろにベータ版としてリリースされる予定です。さらに、一部のPixel端末で限定的に利用可能なAIによる壁紙生成機能も提供されます。
AIを活用した壁紙生成機能では、ホーム画面などで使用する壁紙を自動で作成します。また、端末内のライブラリにある写真に3D効果を加えて、壁紙として使用することも可能になります。
6. Google Photoに新機能「Magic Editor」が登場
引用:Google
Google Photo用の新しい画像編集機能「Magic Editor」が発表されました。「Magic Editor」は、生成AIを含むAI技術を利用して、写真の被写体、空、背景など特定の部分を編集できます。これにより、写真の完成度や雰囲気を細かく調整することが可能となります。
被写体を切り抜いて移動が可能に
「Magic Editor」を使用すると、被写体を切り抜いて写真内での位置を変更できます。例えば、意図した構図がずれてしまった場合でも、「Magic Editor」で被写体の位置を調整して、希望する構図に編集することができます。さらに、不要な部分を選択して削除する機能も提供されています。
空白部分の補完も可能
「Magic Editor」では、被写体を画像中央に配置する際に生じる空白部分を自動的に補完することができます。デモンストレーションでは、子どもが風船を持つ写真で、子どもを中央に移動させた際に空白となる椅子や風船を「Magic Editor」で追加する様子が紹介されました。
一部のGoogleのPixel端末で先行提供予定
Googleは、2023年後半から一部のPixelスマートフォン向けに「Magic Editor」を先行提供する予定です。
7. Google Mapの新機能「イマーシブビュー」が登場
引用:Google
Google Mapのルート案内用の新機能「イマーシブビュー」(Immersive View)を発表しました。イマーシブビューは、AI技術を用いて何十億ものストリートビューや航空写真を組み合わせ、世界のデジタルモデルを構築する機能です。
ルート案内で一度に多くの情報が得られる
Googleマップユーザーにとって、イマーシブビューがルート案内に追加されることで、ルート案内を活用しながら様々な情報を同時に把握することが可能になります。
引用:Google
例えば、ルートに沿った自転車道や歩道、交差点、駐車場などをプレビューすることができます。さらに、「タイムスライダー」機能を利用することで、天候の変化に伴うルートの見た目も把握できます。
イマーシブビューにより、特定の時間帯における交通量もシミュレーションすることができるとされており、より効率的なルート選択が可能となります。