神戸市 ChatGPTの活用事例を公開 本格導入に向けてさらなる準備へ

兵庫県神戸市は、2023年6月から3か月間実施したChatGPTの試行利用の結果を公開しました。

検証報告書では、利用者アンケート結果や代表的な活用事例、ChatGPT導入の効果について紹介されています。

神戸市は、今回の試行利用を受け、引き続き本格利用に向けた準備を進めていくと述べています。

参考:神戸市

試行利用の概要

2023年6月23日から9月22日にかけて、神戸市職員133名がChatGPTの試行利用を実施しました。

神戸市が条例で規定した基準を満たすものとして、Microsoft社の「Azure OpenAI Service」を使用し、市が独自開発した環境下で利用されました。

利用者アンケートの結果

この試行利用では、全2回のアンケートを通じて、9割以上の職員が「仕事効率が向上する」と回答しました。

機能別の評価では「Excel関数やプログラミングコードの生成」が高く評価されましたが、「情報検索」機能に関しては改善の余地が示されました。

出典:神戸市

代表的な活用事例

試行利用期間中には、様々な職種や階層の職員によって、多岐にわたる活用事例が収集されました。その一例をご紹介します。

①市公式X(旧Twitter)の投稿文生成

プレスリリースの資料から、Xの上限文字数である140文字に要約して投稿文を作成する際にChatGPTが活用されました。

ChatGPTの活用によって、専門用語や硬い文章で書かれていた資料をわかりやすく平易な日本語に修正することができました。また、過去の投稿文を入力して同じようなテイストで文章が出力されるため、投稿文の質を担保できます。

②駐車場利用目的調査の市民向けアンケートの作成

駐車場利用者への効果的なアンケートの作成にあたって、ChatGPTの文章生成機能が活用されました。

その結果、設問設定にかかる時間と思考にかかる時間が短縮され、2~3日でアンケートを作成することができました。また、様々な視点の質問内容が生成されたことでアンケートの質が高まりました。

③庁内向けのマニュアルの策定

「オープンミーティング」という新たな仕組みの立ち上げにあたってマニュアルを策定する際、マニュアルの構成や文面の検討にChatGPTが活用されました。

その結果、ゼロから文章を作成するよりも短時間でマニュアルを作成でき、24時間の目安であった作業を16時間で完了することができました。

今後の展開と課題

今後の展開としては、機能面およびサポート面での課題に取り組みながら、安全性を確保した上でのさらなるAIサービスの研究と、その本格利用への検討が進められます。これにより、神戸市の行政運営は、AI技術の助けを借りて新たなステージへと進化することが期待されています。

プロンプト(入力文)に入念な工夫も

神戸市のChatGPTの活用事例ではプロンプト(入力文)が工夫されていることが窺えます。実際に次にようなプロンプトでChatGPTに質問しています。

#役割
・あなたは優秀な自治体職員です。
・全職員に対しオープンミーティングのメリットや注意点、実施までの進め方を示すマニュアルを策定しています。

#前提

・オープンミーティングの定義は、施策の実施方法や進め方、課題解決策を模索する際、テーマと直接的な関連がない所属の職員を交え、会
議・打ち合わせを行うこと。
・議論したいテーマに対して効果的な意見を言ってくれそうな職員(例えば、議論したいテーマが子育て施策なら、職員の中から子育て中の職
員)を募集し、意見交換することで、新たなアイデア・発想を得られると考えている。
#指示
・オープンミーティングの目的を箇条書きで出力してください。

出典:神戸市

ただ文章で質問するのではなく、はじめにChatGPT役割を与えたり、#を使って区切るなどプロンプトを工夫することによってChatGPTの回答精度を上げることができます。ChatGPTで思うような回答がでなくて困っている方は神戸市の活用事例を参考にするとよいでしょう。

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まとめ

兵庫県神戸市は、6月から3か月間実施したChatGPTの試行利用の結果を公開しました。アンケート調査の結果は良好で、様々な業務でChatGPTを活用することによって定量的・定性的な効果も出ていることが報告されました。

神戸市は、全国に先駆けてAIに特化した条例を制定するなど、非常に積極的にAIを活用していることが窺えます。

PROMPTYでは、自治体の生成AI導入状況や実際に生成AI導入している自治体へのインタビュー記事を公開しているのでぜひご覧ください。

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