神戸市 全国初となるAIに特化した条例の制定へ

神戸市は11月24日に、全国の自治体として初めて、AIに焦点を当てた条例「神戸市におけるAIの運用に関する条例」(仮称)の制定を予定していることを発表しました。

この条例策定に向けて、有識者会議を設けると共に、意見募集手続きを実施します。この条例は、神戸市が業務でAIを利用する際に必要となるリスク評価の実施などを規定するものです。

参考:神戸市

今回の告知の背景

神戸市は、個人情報保護の観点から、ChatGPTを始めとした生成AIに関する取り組みとして、全国に先駆けて5月に「神戸市情報通信技術を活用した行政の推進等に関する条例」の改正を行っています。ただし、AI技術は生成AIに限らず様々な分野での活用が進んでおり、神戸市の業務においても、生成AI以外のAI技術の導入が検討される可能性があります。

今回、告知された有識者会議は、11月30日・1月上旬に開催が予定されており、日本マイクロソフト株式会社や東京大学、一般社団法人Urban Innovation Japanなどを構成員とされています。

また、意見募集は市役所、支所のほか、市のホームページから閲覧することができます。

神戸市のAI の活用に関する条例案

神戸市が発行した「神戸市における AI の活用等に関する条例(案)の制定について」によると、生成AIを個人情報等の保護をはかりつつ、積極的に活用していくという観点から、条例の基本理念や指針が明らかにされています。

①条例の目的・ビジョン

この条例は、AI技術を市政に効果的かつ効率的に活用し、市民の権利利益を保護することを目的として発表されました。市民及び事業者がAIをより効果的に利用することで、安全かつ効果的な社会の実現を目指します。

②対象

神戸市および市の業務を請負・受託する事業者を対象としており、市民や一般事業者のAI活用を制限するものではないことが明記されています。

③基本理念

AI活用に関する施策を行うにあたって、次の基本理念を掲げています。

  1. 基本的人権及び社会の多様性を尊重し、人間を支援する技術としてAIを活用すること
  2. 個人及び社会が抱える課題解決と持続可能な社会実現のため、AIを積極的に活用すること
  3. プライバシーと安全性に配慮してAIを活用すること
  4. AIの活用によって不当な差別を受けることの内容に公平性を確保し、AIの判断について透明性と説明可能性に留意して活用すること。
  5. 職員のAIリテラシーの向上に努めるとともに、市民および事業がAIの効果とリスクを判断できる情報を提供すること

④基本指針

AI活用における基本事項、リスクアセスメント、市民及び事業者の効果的なAI活用施策、そして神戸市立学校におけるAIの適正活用教育に関する基本指針を定めています。

基本指針には、以下のような具体的内容が含まれます。

  • AIを活用した市民サービスの向上と行政事務の効率化。
  • 市の事務にAI活用する際の留意点。
  • リスクアセスメントの範囲と項目(AI の影響範囲の特定、プライバシーの保護、説明可能性の確保、公平性の確保、透明性の確保、職員への教育、判断の責任)
  • 市民及び事業者へのAI活用するための周知。
  • 神戸市立学校での情報モラル教育とAIの適正な活用。

この条例案により、神戸市はAI技術を通じて市政の進化を目指し、市民の生活向上に寄与することを期待しています。

まとめ

神戸市は、全国の自治体として初めて、AIに焦点を当てた条例の制定を予定していることを発表しました。

生成AIに関する条例が制定されることで、市の職員は日々の行政業務が効率化されることが期待されます。例えば、データ入力、文書作成、情報分析などの業務が自動化され、職員はより戦略的かつ創造的な業務に注力できるようになります。個人情報保護や権利問題にも規定が設けられることで、職員や除業者、市民が安全にAIを利用できるようになります。

現在、多くの自治体が生成AIを導入し、事例数は2023年11月時点で88件にも上っています。特に、岡山県総社市では生成AIを活用したFAQボットを導入することにより、電話での問い合わせ数が減少して、市役所職員の作業効率を向上することが期待されています。

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皆様も、自治体の生成AI活用場面を参考にしながら、自身の業務や日常生活で生成AIを取り入れてみてはいかがでしょうか。

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