Microsoft 生成AI「Copilot」の出力に対して法的責任を負うと発表

Microsoftは9月7日、ブログにて新しい著作権に関する公約「Copilot Copyright Commitment」を発表しました。

今回の新しい公約の注目すべき点として、生成AI「Copilot」の出力を利用して第三者から著作権侵害で訴えられた場合、Microsoftが弁護をし、訴訟での損害賠償や和解金を支払うとしたことが挙げられます。

なお上記が適用されるには、Microsoft製品に備えられている保護機能やコンテンツのフィルタリングを使用している必要があります。

参考:Microsoft

引用:Microsoft

Microsoftが法的責任を負うと発表した背景

MicrosoftがCopilotによる出力を使用する際の法的リスクを負うと発表した背景として、Copilotsの新しい技術が作業効率や創造性を高める一方、知的財産権の侵害に関する懸念があったことが挙げられます。

一部の顧客からは、Copilotによる出力を利用することで、著作権侵害の恐れがあることが指摘されていました。

これに対応する形で、今回Microsoftは著作権に関する法的リスクを自社が負担するとする「Copilot Copyright Commitment」を発表しました。

Microsoftが法的責任を負うとした「3つの理由」

Microsoftは、Copilotsの出力に対して法的な責任を負う理由として、ブログにて下記の3つを挙げています。

  1. 顧客を支持するという信条
  2. 著作者の権利と公共の利益の尊重
  3. 著作権を尊重するためのガードレールの導入

①顧客を支持するという信条

Microsoftは長年にわたり、顧客が自社の製品を安心して使用できるようサポートしてきました。

特に、法的問題が生じた際、それがMicrosoftの製品の使用に起因するものであれば、Microsoft自身がその問題を担うという姿勢を持ち続けています。

今回「Copilots」に関連する著作権の請求にも同様の支援を行うと発表しています。

②著作者の権利と公共の利益の尊重

既存の著作権法が明確である場面でも、生成AI技術は新しい公共政策の課題を浮き彫りにしています。

Microsoftは、知識の拡散や社会的な課題の解決のためにAIが不可欠であると信じている一方で、著者が著作権法の下で自らの権利を保持し、その創作物から適正な収益を得ることも極めて重要と認識しています。

さらに、AIモデルの訓練と基盤となるコンテンツが、少数の企業に独占されることなく、競争とイノベーションが健全に行われる環境を確保する必要があります。

Microsoftはこれらの目標を同時に達成するための取り組みを継続するとしています。

③著作権を尊重するためのガードレールの導入

「Copilots」には、著作権を侵害する可能性のあるコンテンツの出力を低減するよう設計されたフィルターやその他の技術が組み込まれています。

これらの措置は、デジタルの安全性やセキュリティ、プライバシーの保護を目指すMicrosoftの取り組みを補完するものとして導入されています。

新しい「Copilot著作権コミットメント」では、これらの技術の使用が顧客に要求され、著作権の懸念に対する尊重がさらに促進されるよう設計されています。

「Copilot Copyright Commitment」の詳細

「Copilot Copyright Commitment」は、Microsoftの既存の知的財産権補償の範囲を拡大し、特に有料版のMicrosoft商用CopilotサービスやBing Chat Enterpriseに関連する著作権請求に対応します。この補償範囲には、出力内容も含まれます。

また、Microsoft 365 CopilotやGitHub Copilotも対象となります。

「Copilot Copyright Commitment」が適用される条件

「Copilot Copyright Commitment」が適用される条件として、顧客は製品に組み込まれているコンテンツフィルターやその他の安全システムを使用する必要があります。

また、顧客は、権利を侵害するコンテンツを生成しようとすることはできません。特に、適切な権利を持っていない情報をCopilotサービスに入力してはならないとしています。

またMicrosoftとして、Copilotサービスの出力に関する知的財産権を主張しないという立場は変わないとしています。

Microsoftが生成AIの出力に対して法的な責任を負うことの意義

生成AIによって出力される文章に対しての責任の所在を示した

Microsoftが法的な責任を負うという発表は、生成AIの出力に関する懸念をクリアにしました。

従来、生成AIが出力する情報の正確性や著作権の問題について、責任の所在が不明確であったため、多くのユーザーや企業がその利用をためらっていました。

しかし、Microsoftの今回の発表で、法的なトラブルが生じた際にMicrosoftが対応することが明示されたことによって、顧客に安心感を与えることが予想されます。

生成AI利用のハードルが下がる

生成AIの出力に関する法的リスクをMicrosoftが担保することで、企業や個人が生成AIを利用する際のハードルが低下しました。

ただし、使用者が特定の個人に関する情報を入力する場合など、法的な責任が生じる場合もあるため、注意が必要です。

また、Microsoftが著作権を侵害しないような技術的なガードレールを導入していることも、ユーザーの信頼をさらに深める要因となっています。