ChatGPTは日本でも禁止されるべきなのか!ヨーロッパで禁止されている理由は?

「ChatGPTはプライバシーについてなど問題が多い」「ヨーロッパを中心に禁止や規制の流れがある」

このようなニュースを最近よく目にします。

今回PROMTYでは、ChatGPTの禁止の流れと、日本政府がChatGPTの活用に対してどのような姿勢をとっているのか解説します。

ChatGPTがイタリアで一時禁止!その理由とは?

イタリアのデータ保護機関(GPDP)は、ChatGPTの利用を一時的に禁止し、OpenAIに禁止を解除するために改善が必要な事案を通知しました。

適切な措置がとられない場合、最大で2,000万ユーロ(約29億円)または年間売上の4%に相当する罰金が課せられることが予想されます。

なぜイタリアでこのような措置が取られることになったのでしょうか?

プライバシー法違反と個人情報の不当収集

イタリアのデータ保護機関(GPDP)は、OpenAIが提供するChatGPTがEUのプライバシー法に違反し、個人データを不当に収集・処理しているとして懸念を表明しました。

イタリア規制当局は、OpenAIがユーザーデータを収集してプラットフォームのアルゴリズムを学習させる過程で、法的正当性が欠けていると指摘しています。

透明性の欠如と年齢確認システム不備

さらに、イタリア規制当局は、OpenAIがデータ収集に関する情報をユーザーに提供していないことや、適切な年齢検出システムが欠けていることを問題視しています。

このため、13歳未満のユーザーが不適切な情報に触れる可能性があり、EUのGDPRに違反する可能性が指摘されています。

データ侵害リスクとセキュリティ対策の必要性

イタリア規制当局は、2023年3月20日に報告されたデータ侵害を引き合いに出し、ChatGPTにおけるデータ侵害のリスクについても懸念を示しています。

ユーロポール(欧州警察機関)が犯罪者がChatGPTを利用して詐欺やサイバー犯罪を行う可能性があると発表したことで、これらの懸念がさらに高まりました。

イタリアのプライバシー法に適合するために、データ処理業者は適切なセキュリティ対策を講じる必要があるとされています。

ChatGPTの劇的な普及と法整備の問題

イタリアでChatGPTが禁止された理由で上げたこと以外にも、ChatGPTの劇的な普及によって起こるであろう問題として下記のようなことが挙げられます。

著作権と知的財産権

ChatGPTは、ユーザーの質問に答えるために、多くの情報源から知識を学習しています。

その結果、生成された回答が既存の著作物と類似してしまう可能性があります。

法整備が必要とされる点は、どの程度の類似性が著作権侵害に当たるのか、またAIが生成したコンテンツの知的財産権は誰に帰属するのかといった問題です。

AIに対する差別やバイアスの問題

ChatGPTは、学習データに含まれるバイアスを引き継いでしまう可能性があります。

これにより、差別的な言動やステレオタイプを助長する恐れがあります。

法整備が求められるのは、AIが公平で差別のない情報を提供するように、バイアスの監視と是正が必要です。

責任と説明責任

ChatGPTが損害や問題を引き起こした場合、責任を負うべき主体が曖昧です。

開発者、運営企業、ユーザー、それともAI自体か、法律が明確な責任の所在を定める必要があります。

また、AIの意思決定プロセスの透明性を確保し、説明責任を明確にする法整備が必要です。

AIと雇用法

ChatGPTなどのAI技術の普及により、労働市場に変化が生じる可能性があります。

AIが人間の仕事を代替することによって、労働者の権利や待遇に関する法整備が必要となるかもしれません。

競争法と独占禁止法

AI技術の進歩に伴い、特定の企業がAI市場を独占する恐れがあります。

市場の公正な競争を維持するために、競争法や独占禁止法の整備や適用が求められます。

AI開発競争に対する懸念と一時停止の要求

チャットGPTをはじめとするAI技術の急速な発展に伴い、アメリカを中心にAI開発競争が加速しています。

このような状況に対して、非営利団体であるFuture of Life Instituteが、高度なAI技術開発の一時停止を求める書簡を公開し、注目を集めています。

AI開発競争の現状と署名活動

IT大手企業間でのAI開発競争が激化しており、GoogleやMetaも新しいAIサービスの発表や限定的なサービス開始を予定しています。

一方で、Future of Life Instituteは、GPT-4などの高度なAI技術の訓練を少なくとも6か月間停止するよう求める書簡を公開し、署名を募集しています。

書簡では、高度なAI開発はリスク管理が可能な場合のみ行われるべきであり、一時停止できないならば政府が介入すべきだと主張しています。

これに対し、イーロン・マスク氏アップルの共同創業者スティーブ・ウォズニアック氏をはじめ、1300人以上の署名が集まっています。

一時停止の狙いと提案

書簡は、企業間の競争が制御不能な状態に陥っていると指摘し、高度なAI開発については、外部専門家による監査や安全基準の共同設定が求められるとしています。

ただし、書簡はAI全般の開発停止を求めているわけではなく、あくまで高度なAIの設計と開発に対する懸念と提案を述べています。

日本でも鳥取で県庁職員のChatGPTの業務利用が禁止に

鳥取県の平井伸治知事は、対話型AI「ChatGPT」の業務活用について、県庁内での使用を禁止すると述べました。

また、県議会の答弁資料作成や予算編成、政策策定などの業務について、従来通り地道に取り組むことが民主的であり、地方自治の真骨頂だと主張しました。

平井知事は、個人情報の漏洩や著作権侵害に対する懸念も指摘しています。

詳しくはこちらの記事で解説しています。

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ChatGPTの活用に前向きな日本政府

日本政府は、対話型AI「ChatGPT」について、経済成長や社会の発展に向けて大きな可能性がある技術だと認識しています。

そのため、現時点ではヨーロッパ諸国のような厳しい規制や使用禁止を行っていません。

様々な国でChatGPTを禁止したり、利用を制限したりするニュースが流れる中で、日本の今後の動向が注目されています。

サムアルトマン氏が岸田首相と面会 OpenAI社は日本で巻き返しを図る?

OpenAI社のCEOであるサム・アルトマン氏は2023年4月10日に日本を訪問し、岸田総理大臣と面会しました。

他国では規制が強まっている中で、日本はAI技術の発展や実装に関心を持っていることから、OpenAI社やそのCEOであるサム・アルトマン氏は日本での巻き返しを図りたいという思惑をあるかもしれません。

岸田首相との面会を通じて、AI技術の長所や欠点の軽減について話し合ったことからも、日本政府がChatGPTの活用に前向きであることが伺えます。

まとめ

今回PROMPTYでは、ChatGPTの禁止や規制について解説しました。

法整備等の問題から、ヨーロッパ諸国を中心に規制の動きが強まっていますが、日本政府はChatGPTの活用に前向きです。

これまでテクノロジーに対して法規制などが厳しく、インターネット革命では後れを取った日本ですが、AIの法的な問題に対して、どのように向き合っていくのか注目です。