今回は自然言語処理に関する研究開発とそれを利用したサービスを提供しているエーアイスクエア様にお話を伺いました。
プロフィール
株式会社エーアイスクエア 取締役 堀 友彦
株式会社NTTデータでCRMソフトウェアの企画・開発やBPOビジネスの推進・RPAツールの導入コンサルに従事した後、2018年エーアイスクエアに参画。
AIシステムの導入におけるプロジェクトマネジメントや自社サービスの企画・開発を推進した後、現在は、事業責任者として営業・開発・技術部門を統括。
テキストを生成AIが要約 現場目線で使いやすいUIを意識
Q:どんな生成AIに関するサービスを提供しているのか教えて下さい。
A:当社は創業以来、自然言語処理に関する研究開発を進め、それをサービスとして社会に提供することに尽力してきました。代表的なサービスとして、コールセンター向けの対話要約サービス「QuickSummary2.0」があります。
このサービスでは、音声認識によってテキスト化されたコールセンターでの会話を、自社開発AIとChatGPT等の生成AIを使って要約することで、後処理時間の削減や、FAQ整備の元ネタ作成といった付加価値を提供します。
Q:「QuickSummary2.0」についてもっと具体的に教えてください。
A:音声認識で得たテキストから、全文要約、問い合わせ内容、申し込みの概要、対応状況、申し送りの内容などといった顧客履歴管理システム(CRM)への登録形式で要約を出力します。また、最近よく活用されている機能として、会話の中からQとAに当たる部分を抜き出し要約するものもあります。
その他にも、対話テキストに個人情報が含まれている場合、生成AI側へ送信する前に個人情報を除外するほか、文末を口語体から文語体に変更し読みやすくする処理も行います。
「QuickSummary2.0」は、開発段階においてコールセンターの現場の方々にもプロトタイプを利用いただき、ご意見を伺いながらオペレーションの流れに合わせた画面設計を行っています。UIについては、現場目線で使いやすいものになっていると自負しています。
オペレーターの後処理をスムーズにして、「使える履歴」を残す
Q:「QuickSummary2.0」の導入によりどのような効果があるのかを教えて下さい。
A:主に生産性向上の観点から効果があります。例えば、コールセンターの業務は基本的に電話でのお客様応対が中心ですが、応対が終わった後に、「こういった問い合わせがありました」といった情報をまとめ、顧客履歴管理システム(CRM)に入力するというプロセスがあります。
これは新人や不慣れな方などは、応対中に紙のメモに記録し、後でそれをCRMに登録するという手順を踏むため、時間がかかりがちな業務とされています。
このような業務は後処理と呼ばれますが、後処理に時間をかけるとオペレーターが次の電話にすぐに対応できず、お客様を待たせることになり、応答率が低下してしまいます。これを防ぐために、応対内容を音声認識でテキスト化し、そして生成AIを活用した要約で履歴作成を効率化することで、オペレーターがスムーズに電話応対を続けることが可能になります。
また、お客様の声をしっかりと分析し、業務改善やサービス向上を目指すコールセンターにおいて、お客様の声がすべてテキスト化され、その要約が蓄積されること自体が、サービス改善や業務改善の観点から非常に価値のあることです。
Q:どのようなコールセンターが「QuickSummary2.0」を導入しているのか教えて下さい。
A:やはり、音声認識やこの種のソリューションは導入コストがかかるため、中規模・大規模のコールセンターでROIが見込めるお客様にご導入いただくことが多いです。
テキスト処理全般に関わるコールセンター業務を高度化し、DX化推進を目指す
Q:生成AI活用における今後の展望を教えてください。
A:生成AIの分野では、さまざまなベンダーが安価で高性能な製品を次々とリリースしています。例えば、GPT4-oやGPT4-o mini、AnthropicのClaudeなどの価格競争力がありながら精度の高いモデルが登場しています。こうした生成AIモデルを、「QuickSummary2.0」に限らず様々なサービス内で柔軟に利用できるようにすることが目標です。
また、当社のソリューションはコールセンター基盤の中でご利用いただくサービスですので、PBX(電話基盤)やCRM、音声認識等といった他ソリューションとの連携をより容易にすることが、導入を容易にするポイントです。
加えて、要約出力のチューニングについては「プロンプトエンジニアリング」技術で行うことが一般的ですが、プロンプトの設計や検証をツールで簡素化し、ユーザーが容易にシステム反映できるようにすることで、期待する要約結果をスピーディーに現場適用できるようにすることも考えています。
最後に、ここまでは音声認識や要約といった観点でコールセンターのDX化の支援についてお話してきましたが、私たちのミッションは要約だけではなく、コールセンター業務全体を高度化し、DX化を推進することです。
例えば、RAG(Retrieval Augmented Generation)と呼ばれる仕組みを活用し、データソースの情報をもとに適切な回答を生成できるカスタマーサポートの仕組みを提供することも視野に入れています。企業とお客さまの間のコミュニケーションを豊かなものにするべく、今後も技術・サービス開発に取り組んでまいります。