生成AIを活用した子育て分野チャットボットを提供 別府市

今回は、生成AIの活用を推進し、また市民向けに子育て分野のチャットボットを提供している別府市情報政策課様にお話を伺いました。

プロフィール

明田 舞子(みょうだ まいこ)氏
平成24年に事務職として入庁。保険年金課、都市計画課、福祉政策課を経て、令和元年から現職。デジタルファーストの推進として、生成AIの活用のほか、LINE公式アカウントの開設等も手掛ける。

職員向けの生成AI導入と、市民向けに生成AIを活用した子育てチャットボットを提供

Q:生成AIに関する取り組みを教えてください。

A:別府市情報政策課では、生成AIに関する取り組みが主に二つあります。

一つ目の取り組みは、汎用的な生成AIを職員向けに活用することです。これについては、昨年の春に横須賀市が導入したというニュースを受けて検討を始めました。

横須賀市では株式会社トラストバンクの製品を使用していますが、私たちはシフトプラス株式会社の製品で、トライアルを実施しました。その結果、職員からの評価が高かったため、昨年度の11月から本格導入しました。

職員向けの具体的な活用例としては、企画系の部署でのキャッチコピー作成や、イベントなどでの挨拶文の素案作成があります。また、エクセルの関数について尋ねるケースもありました

二つ目の取り組みは、子育て分野の市民向けの生成AIチャットボットの開発です。
昨年度の夏から、大分大学医学部とSDT株式会社と協力し、2024年1月に協定を結び実証運用を開始しました。

このチャットボットの実証運用は、2024年の3月から4月にかけて1ヶ月間行いました。また、8月から9月末まで実証運用の第二弾を実施しました。

チャットボットイメージ図

スモールスタートで対象を絞り生成AI活用を広める 

Q:一つ目の取り組みについて、職員の生成AI活用のトライアルが高評価だったようですが、理由についてどのように考えていますか?

A:生成AI活用のトライアルに関して高評価を受けた理由として、全員にアカウント配布を行うのではなく、「生成AIに興味があり、使いたい人」にアカウントを配布したため評価が高くなったのだと考えています。また、このような人向けに勉強会などを行っています。このようにまずは、興味のある人が使える環境を作ることでデジタル活用を推進しました

逆に、使っていない職員については、興味がないか、あるいは知らない可能性があります。
そういった人が置いていかれる問題についてどうするかが一つの課題と考えています。しかし、これについては、利用している職員からの良い口コミによって生成AIの活用が広がっていくことで、自然と解決していくのかなと考えています。

Q:二つ目の子育て支援をしてくれるチャットボットの取り組みについて、なぜ子育て支援というジャンルに着目したのですか?

A:子育て世代の方々が主に20代~40代とスマホに使い慣れている世代であり、かつ日中働いていることで市役所に電話することができない方が多いのではないかと想定し、子育て世代とデジタル関連の政策がマッチするのではないかと考えたからです。

職員向けのAI活用についても、子育て支援にしてもスモールスタートで対象を絞りAI活用を広めていくという戦略をとっています。

ダイレクトで回答を得られる生成AIチャットボット、ただしユーザーの教育が必要

Q:子育て分野チャットボットの使い方を教えてください。
A:使い方で言えば、別府市の公式LINEを入り口にし、そこからチャットボットのURLに誘導する形をとりました。

Q:子育て分野チャットボットについて現状の課題とその対策を教えてください。
A:1年前から導入済のシナリオ型のチャットボットにはメリットとデメリットがありますが、そのデメリットを生成AIが克服しています。そのデメリットとは、自分が知りたい情報にたどり着くためには複数の階層を押さなければならず、正確な情報にたどり着けるかどうかが不確かであるということです

一方、生成AIは自然言語で質問すると、それに応じた文章を生成して返してくれるので、シナリオ型のデメリットを克服しています。しかしながら、生成AIのチャットボットについてもまだ課題があり、ハルシネーションや、ユーザーが良いプロンプトを作れないと良い回答が返ってこないという点です

まず、 前者については、非常に慎重に細かく実験を重ねることで、ハルシネーションを抑制しています。次に、後者についてはある種ユーザー教育がポイントだと考えています。プロンプトの例などを示すことで、ユーザーがどのように質問をすれば良い回答を得られるかを理解しやすいようにしていきます

「いかなくていい市役所」を目指す

Q:生成AI活用に関する、今後の展望を教えてください

明確な計画としては「デジタルファースト推進計画」を策定し、「いかなくていい」「またなくていい」「情報が直接届く」の3点を掲げ、デジタル施策を推進しています。生成AIは、今回実証中の子育て分野のチャットボットのように、「いかなくていい」分野において活用を広げることで、市民サービスの向上を図りたいと考えています。