生成AIを市役所内に導入し、業務を効率化 由利本荘市

今回は、市役所内に生成AIを導入し、市役所業務を効率化している由利本荘市様にお話を伺いました。

プロフィール

由利本荘市 総務部 行政改革推進課 デジタル化推進班長
木内 崇(きのうち たかし)

農林水産省職員を経て、平成27年に由利本荘市役所に入庁。農業振興課、市民サービス課を経験後、令和4年度から現所属となり、書かない窓口導入など庁内のデジタル化推進や、デジタル人材育成研修の企画調整などを担当している。

Microsoft 365 を導入 主にCopilotを活用

Q:市役所内に生成AIを導入した背景を教えて下さい。

A:生成AIの導入は多くの他の自治体が生成AIを活用している中で、由利本荘市としてもデジタル化を推進しているという観点から、ChatGPTの活用ができないかというところから始まりました。

当初、ChatGPTの具体的な活用方法は決まっていませんでしたが、市ではデジタル化推進計画を策定しており、その一環で生成AIの活用を決定しました。そして、市長からも「ぜひそうした技術を活用していこう」という意向があり、昨年の6月から使用ができるようになりました。

6月から利用可能になった際には、市として最低限のルールを定めるためにガイドラインを策定しました。このガイドラインでは、「このような場合に効果的に活用できるが、ここまでは制限する」という形で基準を設けました。

ガイドラインの策定については、何でも禁止するのではなく、メリットがある部分は積極的に活用し、可能性を広げていこうという方針で行いました

現在は、生成AIに関する検証の結果、要約や構成、キャッチフレーズの作成などにも活用できることが確認されたので、こうした活用案を示しつつ、職員に実際の業務で使用してもらっている状況です。

Q:使用している生成AIサービスについて教えて下さい。

A:我々はMicrosoft 365を導入しており、そこに付随するCopilotがメインのツールとして使われています。

また、メインのツールはCopilotですが、利用者によってはChatGPTや無料で使えるツールを主に活用しています。他にも、Microsoft 365をローカルブレイクアウトとして通している関係で、Copilot for Microsoft 365も今後活用していく予定です。

Q:生成AIが業務においてどのように活用されているか教えて下さい。

A:市役所の全業務において、生成AIを活用するのは難しい側面もあります。そのため、適用できる部分から順次活用しています。具体的には仕様書の書き方やExcelの関数の使い方、観光地の案内の仕方を尋ねたり、挨拶文を作成すること等に活用されているという結果がアンケートより出ています。

Q:市役所内に生成AIを導入したことによる効果を教えて下さい。

A:詳細なデータを持っていないので定量的には示せませんが、「メールの返信やExcelの簡単なマクロを組む際に生成AIを利用し、非常に便利に感じる。」や「Pythonでコードを書く際に生成AIを頻繁に使用し、間違った部分もすぐに修正してくれるので、非常に重宝している。」といった声があり、生成AIを導入したことによる効果を実感しています

住民サービスの向上と職員の問い合わせ対応にかかる人員の削減を目指しAIチャットボットを導入予定

Q:生成AIの活用を浸透させるためにどのようなことに取り組みましたか?

A:過去に何度か研修を行いました。最初の研修を実施することが決まった際には、対面式で研修を行いました。また、昨年の6月26日には、対面とオンラインのハイブリッド形式で研修を実施し、この際、研修の活用方法についても、全員に詳しく指導しました。

また、この研修には新聞社・テレビ局の方々にも取材いただき、行政での活用という意味での関心の高さが窺えました。

そして、そろそろ次のステップとして、もう一度研修を実施できればと考えております。PROMPTYさんの記事を拝見した際に、「こうしたプロンプトを書くと良い」といった具体的な指導ができる研修があれば、非常に有益だと考えたからです



Q:生成AIの活用に関して今後の展望を教えて下さい。

A:今後についてですが、今年度には住民サービスの向上と職員の問い合わせ対応にかかる人員の削減を目的として、AIチャットボットの導入を予定しています。

このチャットボットについては、AIの活用を前提としていますが、回答文書の生成にAIを使用するか、質問の解析にAIを使用するか、またはその両方を組み合わせるかについて検討中であり、今後の状況や応募内容に応じてどうするか考えていきます。

また、ガイドラインについて、まず内部向けに全体をカバーする形で作成しましたが、今後、世の中の変化に応じて改定が必要になる可能性があります。そして、ガイドラインの改訂に合わせて先ほど述べたような研修も再度実施していく必要があると考えています。