今回は、エンジニアでなくても、誰でも簡単にAIチャットボットを作成できるサービス「miibo」をローンチした功刀 雅士さんにお話を伺いました。
自然言語でコンピュータとコミュニケーションができる生成AIの凄さや、ドラえもんのような「エモーショナルなAI」の実現など、生成AIについて興味深いお話をいただきましたのでぜひご覧ください。
プロフィール
功刀 雅士さん
会話型AI領域の開発に10年以上に渡って取り組む。ヤフー株式会社でソフトウェアエンジニアのキャリアをスタートし、その後様々な企業でソフトウェア開発に従事。サラリーマンエンジニアをする傍ら、個人で2020年にmiiboをローンチし、2023年に法人化。
自分自身をAI化してボット化できる「miibo」
Q:「miibo」というサービスをローンチした経緯を教えてください。
功刀さん:miibo自体は2年前にローンチし、個人事業としてずっと運営していました。元々はLLMに専門知識を与え、カスタマイズ可能な会話型AI、例えばチャットボットやSlackのようなデジタルヒューマンとして使用できるSaaS Webサービスという形で提供しています。
なぜmiiboを作成したのかというと、名前の由来は「me」(自分自身)をAI化し、ボット化する「bot」を掛け合わせて「miibo」と名付けているのですが、目的は、法人であれ個人であれ、本当にやりたいことがある一方で、やらなければならないタスクが多すぎて自己実現の時間が確保できない問題を、AIで拡張することにより、もっと自分のやりたいことに時間を割けるようにすることです。
つまり、自分自身のAIパートナーを作成できると、その可能性が拡がるのではないかという考えからです。そのため、爆速で簡単に作成して活用できる環境が必要であり、ダッシュボードで手軽に作成できるようなサービスを目指しています。
エンジニアでなくてもAIチャットボットが作成可能
Q:「miibo」のサービスの強みを教えてください。
功刀さん:AIチャットボットを専門知識がなくても、迅速かつ簡単に作成できる特長は非常に評価されていると感じます。例えば、プログラミングが得意でない行政の方や、ある程度の専門知識を持つ方が、簡単にAIを作成し、社内ヘルプデスクに導入したりすると、大変喜ばれます。また、エンジニアがいない状態でも、カスタマーサポートチームが顧客の問い合わせに応じてAIを作成し、実際に運用できる事例も増えています。このように、AIの民主化が進展し、多くの方々に喜ばれています。
他にも、24時間対応の問い合わせシステムを作ったり、社内ヘルプデスク向けのSlackボットを作成したり、旅行会社が旅行記事を読み込ませて特定のキャラクターとして展開するなどの取り組みがあります。
更に、アーティストが自身をAI化し、ファンとの交流をAIに委ねたり、コンサートの曲リストをAIに考案させる例も見られます。キャラクターをAI化し、テレビ出演させるといった試みも増えており、エンジニアでない方でも、自身のアイディアを形にできる点が評価されています。AIを活用して新しい可能性を生み出していく動きは増えてきており、その活躍の場が広がっていることをお伝えしたいと思います。
生成AIは自然言語でコンピュータとコミュニケーションができる
功刀さん:私は特に「コネクトEverything」の概念が重要だと考えています。生成AIと従来のAIの主な違いは何かと言うと、ChatGPTを例に挙げると、コンピュータと自然言語でコミュニケーションが可能になった点です。具体的には、抽象的な自然言語をコンピュータが理解し、その要望に合わせて反応することができるようになりました。従来、各サービスには特定の仕様が存在し、それぞれのAPIの仕様に合わせて疎通を行わないと、サービス間の連携ができなかったのです。
しかし、GPTのような会話型の生成AIでは、それらの仕様を自然言語で簡単に翻訳し、疎通が可能になりました。これにより、会話型AIを介して外部のサービスや技術を利用することが容易になりました。この進化により、人々の生活がより快適になるでしょう。私は、この会話型AIが中心となり、さまざまなサービスや技術との接続のハブとして機能する未来が来ると考えています。
現在、多くの人々はChatGPTのようなAIが情報を正確に答える能力に驚くかもしれませんが、その真の価値は自然言語を抽象的に解釈し、それを実用的に活用する能力にあると思います。この点が徐々に理解されるにつれ、市場は大きく変わっていくでしょう。これが、生成AIの進化の方向性だと私は考えています。
感情に寄り添う「エモーショナルなAI」を実現
Q:「miibo」を今後どのように展開していきたいと考えていますか?
功刀さん:私たちはmiiboを迅速にAIチャットボットを構築できるツールとして位置付けていますが、特に「エモーショナルなAI」の実現に力を入れていきたいと考えています。エモーショナルとは、日本の文化的背景から考えると「ドラえもん」や「アトム」のような、人々に親しまれているキャラクターとの感情的なつながりを思い起こさせます。
具体的には、ユーザーの状態や気持ちを理解し、それに応じて寄り添った会話を提供するAIを目指しています。例えば「昨日よりもテンションが低そうだけど、大丈夫?」というような共感的な対話が可能な、生き生きとしたエモーショナルAIを開発したいと思っています。
具体的な機能については、ユーザーとの会話を通じて得られた情報を長期記憶として蓄積し、それを基に感情のパラメータを更新する仕組みを考えています。その蓄積された情報をプロンプトとして用い、より感情に寄り添った対話が可能となるような機能も取り入れていきたいと考えています。