Azure OpenAI ServiceとOpenAI API、どちらを導入すべき?それぞれの特徴と活用方法を独自調査してみた

「Azure OpenAI ServiceとOpenAI APIはそれぞれどのようなサービスなの?」「両者の違いや特徴を理解して、効果的に活用したい!」… そう思う方もいるのではないでしょうか。

Azure OpenAI ServiceとOpenAI APIには異なる特徴があり、場面によってどちらを選択するのが有効かを考える必要があります。

今回PROMPTYでは、Azure OpenAI ServiceとOpenAI APIの主な違いや活用方法を詳しくご紹介します。

Azure OpenAI Serviceとは?

Azure OpenAI Service は、Microsoft と OpenAI が共同開発したMicrosoft Azure 上で OpenAI の AI モデルを使用できるサービスです。

Azure OpenAI Service では、GPT-4、GPT-3.5-Turbo、Embeddingsなどの OpenAI の強力な言語モデルをREST API として利用することができます。

OpenAI APIとは?

OpenAI APIは、OpenAIが提供するGPTモデルなどを、外部のシステム・サービスと連携するためのAPIです。

OpenAI APIを利用することで、テキスト生成、質問応答、要約、翻訳など自然言語処理タスクや、他のAI関連のタスクの実行にOpenAIのモデルを使用することができます。

OpenAI APIを使用するには、まず「APIキー」を発行する必要があります。このAPIキーによって利用した使用量に応じて、課金される仕組みです。

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Azure OpenAI ServiceとOpenAI APIの違い

比較表

Azure OpenAI ServiceOpenAI API
提供元MicrosoftOpenAI
認証方法APIキー、Azure ADAPIキー
接続方法インターネット接続、閉域接続インターネット接続
開発OpenAI と共同開発した API で互換性あり標準的な RESTful API 
利用可能モデルGPT-4、GPT-3.5、GPT-3、Codex、 Embeddings、DALL-EGPT-4、GPT-3.5、GPT-3、Codex、Embeddings、DALL-E、Whisper 
セキュリティAzureのセキュリティ基準に準拠
APIキーによる認証とAzure AD認証
・仮想ネットワーク(Azure Virtual Network)による保護
OpenAI のセキュリティ基準に準拠
・APIキーによる認証
プライバシーマイクロソフトの声明およびAzure OpenAI Serviceの製品ポリシーに準拠
日本の法律に準拠し、東京地裁裁判所を管轄裁判所として契約可能
・OpenAI のプライバシーポリシーに準拠
カリフォルニア州法に準拠
価格モデルに応じた価格(Azure の価格体系モデルに応じた価格(OpenAI の価格体系
リージョンリージョンごとに使えるモデルが異なるリージョンの概念なし
SLA99.9%以上の稼働率を保証なし
サポートAzure サポートプランでサポートサポートプランはなし
データ・マイクロソフトのモデルのトレーニングに使用されることはない
・ユーザーのモデルのfine-tuning に使用できる
悪用や誤用の監視目的で30日間保持
・OpenAIのモデルのトレーニングに使用されることはない
・OpenAI APIを利用したSaaSの場合は学習データに利用される可能性がある
悪用や誤用の監視目的で30日間保持

価格

Azure OpenAI Service、OpenAI API共に従量制の課金モデルで、モデルごとに価格が異なります。2023年9月時点では両者の価格は同じです。

例:言語モデル

ModelcontextInput(1000トークンあたり)Output(1000トークンあたり)
GPT-3.5-Turbo4K0.0015ドル0.002ドル
GPT-3.5-Turbo16K0.003ドル0.004ドル
GPT-44K0.03ドル0.06ドル
GPT-416K0.06ドル0.12ドル

セキュリティ

OpenAPIは、OpenAIのセキュリティ基準に準拠しています。

Azure OpenAI Serviceは、 Azureのセキュリティ基準に準拠しています。

Azureのセキュリティは90以上のコンプライアンス認証を持っているため、Azure上で構築を行うことで、コンプライアンス認証を取得したサービスとして運用できます。

また、Azure Key Vaultでトークンやパスワード、証明書、APIキーの情報を集約して管理し、同時にそれらの情報の安全性も確保します。

加えて、Azure Virtual Networkという仮想ネットワークを通じて、Azure内で他のネットワークか文理したプライベートなネットワークを作成することができます。

Service Level Agreement(SLA)

OpenAI API は SLA が提供されていないため、サービスの稼働が保証されていません。

一方、Azure OpenAI Serviceは、他のAzure Cognitive Servicesと同様に99.9%以上の稼働率が保証されています。(参考:Service Level Agreements (SLA) for Online Services

そのため、自社でGPTを組み込むシステム開発を行う場合には、Azure OpenAI Serviceの方がシステム障害を最小限に留めることができ、安定したサービスが期待できます。

リージョン

OpenAI APIは、リージョンの概念がありません。

Azure OpenAI Serviceでは、東日本を始めとしたリージョンの選択が可能です。

  • GPT-3.5 turboの場合…オーストラリア東部、カナダ東部、米国東部、米国東部 2、フランス中部、東日本、米国中北部、スウェーデン中部、スイス北部、英国南部
  • GPT-4の場合…オーストラリア東部、カナダ東部、米国東部、米国東部 2、フランス中部、東日本、スウェーデン中部、スイス北部、英国南部

Azure OpenAI ServiceとOpenAI APIどちらを使うべきか

ケース①:入力した質問や回答データを外部に漏らさずに利用したい

OpenAI API、Azure OpenAI Serviceともに、ユーザーが入力した内容はモデルの学習データのトレーニングには使用されません。

しかし、企業のプライバシーポリシーによって、社内情報を外部へ送信できない場合があります。この場合、Azure OpenAI Serviceを使用すれば、Azureの環境内で専用のGPTサーバーを構築することができます。これにより、社内のスタッフが入力するプロンプトは外部に送信されず、社内のネットワーク内のみで取り扱うことができます。

そのため、入力した質問や回答データを外部に漏らさずに利用したい場合には、セキュリティの面からAzure OpenAI Serviceが有効だと考えられます。

ケース②:最新のモデルを利用したい

OpenAI APIには、Azure OpenAI Serviceにはない音声認識モデルWhisperのようなモデルがいくつかあります。特に新しいモデルは、最初にOpenAIで導入され、その後にAzure OpenAI Serviceで利用できるようになるケースが多いです。

最新のモデルやAPIを活用したいと考えるならば、OpenAI APIを使用した方が良いと考えられます。

ケース③:独自の情報をもったチャットボットを作成したい

社内の情報検索ができるチャットボットや自動応答FAQのシステムを開発する場合、決まったプロンプトに対して決まった回答を設定しなければなりません。

Azure OpenAI Serviceのカスタムモデル機能を使用すると、GPT-3.5やGPT-4に特定のプロンプトやその応答を追加することができます。これにより、システム独自の知識を持つチャットボットを社内および顧客向けに提供することができます。

また、このカスタマイズはJSON形式で行うことができ、高度な知識や専門的なスキルは不要のため、簡単に独自の知識を組み込むことが可能となっています。

独自の情報を持ったチャットボットを作成したい場合には、カスタムモデル機能をもったAzure OpenAI Serviceが有効と考えられます。

ケース④:WindowsやAzureのサービスと連携したい

Azure DirectoryとAzure Cognitive Searchを組み合わせると、社内のOffice文書の内容を抽出し、その情報を元にした要約や質問応答を提供するチャットボットアプリケーションを作成することができます。

更に、従業員のアクセス権限に対応して回答内容をカスタマイズすることもでき、セキュリティ面でも高い柔軟性を持たせることができます。

WindowsやAzureのサービスと連携したアプリケーションを開発する場合には、MicroSoftが提供するAzure OpenAI Serviceを使った方が高い汎用性を実現できると考えられます。

ケース⑤:アプリやシステムのプロトタイプを開発したい

OpenAI APIは、APIキーさえ発行していれば、すぐにAPIを利用できます。Azure OpenAI Serviceの利用には、登録申請をする必要があります。

そのため、APIの動作検証やアプリケーションやシステムのプロトタイプを作成する際、OpenAI APIを利用することで、迅速に動作確認や実装ができるでしょう。

ケース⑥:安定して稼働するシステムを開発したい

OpenAI APIを利用する場合、APIサーバーはOpenAI側に設置されています。したがって、OpenAI側での仕様の変更があった場合、APIのレスポンス内容が突如として変わる可能性が考えられます。

それに対し、Azure OpenAI Serviceでは、GPTサーバーをAzure環境内に独立してデプロイすることができるので、上記のような変更リスクを避けることが可能です。また、Azure OpenAI Service は Azure のサポートも受けることができます。

そのため、安定して稼働するシステム開発を要求する場合には、Azure OpenAI Serviceの方が有効と考えられます。

まとめ

今回PROMPTYでは、Azure OpenAI ServiceとOpenAI APIの違いや特徴を解説しました。

この情報を基に、皆さまも最適なサービスを選択し、効果的に自身のシステムに生成AIを導入してみてはいかがでしょうか。

PROMPTYでは、ChatGPTやStable Diffusionを始めとした生成AIについての記事も多く扱っているので、是非ご覧ください。