「Stable Diffusionを始めたいけど、必要なスペックがわからない…」「なぜGeForce RTX 3060がこんなにも人気なの?」 これらの疑問をもつ方は少なくないでしょう。
実は、NVIDIA社製の「GeForce RTX 3060」がStable Diffusionの画像生成に使われるグラフィックボードとして非常に人気が高くなっています。
今回PROMPTYでは、Stable Diffusionに最適なグラフィックボードを選ぶポイントと、GeForce RTX 3060が人気な理由を詳しくご紹介します。
Stable Diffusionで推奨されるPCスペック
はじめに、Stable Diffusionの環境構築に推奨されるPCスペックについて解説します。
以下が大まかな推奨スペックになります。
推奨スペック | |
PCの種類 | デスクトップ型 |
OS | Windows(64 bit) |
CPU | 特になし |
GPU | VRAM12GB~ |
メモリ | 16GB(学習させる場合32GB) |
ストレージ | 512GB~(できれば1TB) |
Stable Diffusionを使用する際にCPUの性能はそこまで気にする必要はありません。ハイエンドだとCore i3~i5相当、ミドルエンドだとCore i5~i7相当の性能があれば充分です。
Stable Diffusionの使用にあたってGPUの性能は1番重要といっても過言ではありません。GPUは画像処理などを行う部分であるため、ここの性能が画像生成の速さなどに直結します。
VRAMの容量が小さくても、Stable Diffusionを起動することができますが、追加学習まで考えると12GB以上が推奨されます。
「Stable Diffusionを使いたいけど今のPCではスペックが足りない…」「Stable Diffusionを使うにはどんなスペックが必要なの?」そう思う方もいるのではないでしょうか。Stable Diffusionを効果的に使用[…]
Stable Diffusionのグラボの選び方
Stable Diffusionで画像を生成するには、推奨スペックを満たすGPUを搭載したグラフィックボード(グラボ)を準備する必要があります。
ここでは、Stable Diffusionで使用するグラボの選び方について、次の3つの観点で解説します。
- メーカーの選び方:NVIDIA社製のGeForce・AMD社製のRadeonどちらがいいか
- VRAM(GPU版のメモリ)の容量
- コストパフォーマンス
①メーカーの選び方:NVIDIAとAMDどちらがいいの?
グラボの選択肢として、主にNVIDIA社の「GeForceシリーズ」とAMD社の「Radeonシリーズ」の2つが挙げられますが、NVIDIA社製のGeForceが推奨されます。
特に、Stable Diffusionの場面では、GeForceシリーズの方が明らかに効率が良くなります。一方、AMDのRadeonシリーズを利用すると性能が大幅に落ちる傾向にあります。理由は、最適化がほとんどされておらず、設定変更やドライバの更新などでも大きな改善は見られないためです。
実際、Stable Diffusionは、NVIDIAのGPUに特化して開発されています。また、ほかの多数のアプリケーションもNVIDIAのGPUを前提に制作されており、これはNVIDIAのGeForceの高い市場普及率に起因しています。
Stable Diffusionにおいても、Radenが高いパフォーマンスを発揮できることがあるかもしれません。しかしながら、現段階ではStable DiffusionにおけるRadenのパフォーマンスはあまり期待できません。
②VRAMの容量
Stable Diffusion Web UI(AUTOMATIC1111)の公式ページでは、VRAMの容量について次のように記載されています。
When running on video cards with a low amount of VRAM (<=4GB), out of memory errors may arise. Various optimizations may be enabled through command line arguments, sacrificing some/a lot of speed in favor of using less VRAM:
和訳:VRAMが少ない(4GB以下)ビデオカードで実行する際には、メモリ不足のエラーが発生する可能性があります。コマンドラインの引数を通じて、さまざまな最適化が可能となっています。VRAMの使用量を減少させるために、いくらかあるいは大幅に速度を犠牲にすることになります。
引用元:https://github.com/AUTOMATIC1111/stable-diffusion-webui/wiki/Troubleshooting
公式には4GBで動作可能とのことですが、4GBでは実際のところ、プログラムを起動すること自体が難しい状態です。
Stable Diffusionを頻繁に利用することを考えると、4GBではメモリが足りず、複数のタスクを同時に実行したり、画質やサイズを向上させたい場合、エラーがたびたび起きるリスクがあります。少なくとも6GBのメモリは必要ですが、それでも画像の解像度を上げるとエラーが発生してしまいます。
VRAMの最小限の容量は8GBですが、12GB以上が理想的です。そのため、高いパフォーマンスを持つグラボが適しており、低いスペックのものは向いていません。Stable Diffusionを使って画像生成することを考えている場合、12GB以上のVRAMを持つグラボの購入をおすすめします。
ただし、AMDのRadeonはNVIDIAのGeForceに比べて、性能効率が低いです。特に、RadeonのVRAM使用効率が劣っており、仕様は同じでもStable Diffusionでのメモリの使用量はRadeonの方が大きくなり、エラーも発生しやすくなっています。
③コストパフォーマンス
一般的に、グラボの性能向上に伴い、価格は急激に高まります。4万円のグラボと8万円のものの間には、価格で2倍の違いがありますが、実際の性能で2倍の差はありません。
ただし、Stable Diffusionを使用すると、価格が2倍のグラボで画像生成時間が約2倍速くなります。さらに、画像の枚数や解像度を増やすと、その差はさらに大きくなり、時間は2倍以上速くなることが考えられます。
このため、Stable Diffusionを使用する場合、高性能なグラボほどコストパフォーマンスは高くなります。Stable Diffusionを頻繁に使う方にとって、高性能なグラボを選ぶことによって得られるメリットが大きくなります。
Stable Diffusionにおすすめのグラボ4選
ここでは、Stable Diffusionを使った画像生成におすすめのグラボを4つご紹介いたします。
全てのモデルは、前章で解説した通り、VRAM容量は12GB以上となっています。
各モデルは異なる価格やスペックとなっているため、自身の用途や予算に応じて選んでください。
VRAM容量 | 参考価格 | |
GeForce RTX 3060 | 12GB | 40,384円 |
GeForce RTX 4060 Ti | 16GB | 79,800円 |
GeForce RTX 4070 Ti | 12GB | 119,090円 |
GeForce RTX 4090 | 24GB | 299,312円 |
グラボの価格は時期によって大きく変動するため注意が必要です。実際の最新価格についてはAmazonなどのオンラインショップでご確認ください。
①コスパが良くAI画像生成初心者におすすめ「GeForce RTX 3060」
12GBのVRAM容量を持ちながら4万円台で購入できる「GeForce RTX 3060」は最もコスパの良いグラボです。
これからStable Diffusionを始める方には最もおすすめのモデルとなっており、ひとまずスムーズなイラスト生成ができるでしょう。
しかし、ミドルクラスの製品なので、大量のイラストを一度に生成する場合や追加学習を行う場合など、AI画像生成の上級者の方にはスペック不足かもしれません。
②手頃な価格で高解像度の画像を生成できる「GeForce RTX 4060 Ti」
約8万円の予算で手に入る「GeForce RTX 4060 Ti」は、その16GBのVRAMを活用して、高解像度のAIイラスト生成に非常に適しています。
最新のSDXL 1.0でフルHD~HD相当の解像度での画像生成を考えるなら、このモデルは高いコストパフォーマンスを発揮します。
RTX 4060 Tiを超える速度を持つグラボは、RTX 4080やRTX 4090で価格は2,3倍上がります。そのため、手頃な価格でコストパフォーマンスを重視する方におすすめです 。
③高速で画像生成や追加学習ができる「GeForce RTX 4070 Ti」
「GeForce RTX 4070 Ti」はRTX 3060と同じ12GBのVRAM容量を持ちながら、約3倍の速度で画像を誠意性出来ます。価格も約3倍となっているため、購入を考える際には、予算や速度について自身の優先度を基に判断してください。
大量の高画質イラストの生成や、Stable Diffusionを本格的に活用したい場合におすすめです。
④高額だが最高峰のスペックを持つ「GeForce RTX 4090」
現在、最もハイスペックなモデルの「GeForce RTX 4090」は24GBのVRAM容量を持ち、 他製品と比べても、高速で画像生成や学習を進めることができます。
最新のSDXL 1.0の高解像度イラストやHires Fixを使ったアップスケーリングにおいて、RTX 4090はRTX 4080と比較しても、価格の差以上の性能差を示します。
価格は30万円程度と高額なため、予算に余裕がある方や効率を重視する方におすすめです。
GeForce RTX 3060が人気な理由
ここまでの内容を参考に、Stable Diffusionの画像生成に「Geforce RTX 3060」が広く使われる利用をまとめると、
Stable Diffusionでの画像作成の際、グラボのVRAMが常に使用されます。具体的には、VRAM容量が6GB搭載のグラボでは、その利用率が常に上限に達しています。
Stable Diffusionのデフォルトの解像度である512×512の解像度の画像作成に限って考えると、VRAM12GB搭載のボードは使用率に大きな余地があり、生成時間も大きく異なります。これがVRAM容量を持つグラボが推奨される理由です。
さらに、追加の学習を行う際も、12GB以上のVRAMを搭載したグラボが欠かせません。
この仕様を満たし、低価格なモデルの代表例が「GeForce RTX 3060」です。このモデルを超えると、製品の価格も高くなるため、Stable Diffusionでの画像生成の初心者向けに広く使われています。
GeForce RTX 3060 を購入する際の注意点
「GeForce RTX 3060」を始めとしたグラボを購入する際には、スペックをきちんと確認する必要があります。NVIDIAの公式サイトから詳細を見ることができます。
出典:NVIDIA
①VRAMの容量を確認する:8GB版があるので注意!
RTX 3060にはVRAM12GB版と、VRAM8GB版が存在します。上位モデルであるRTX 3060 TiもVRAMは8GBとなっているので、購入時には製品の仕様をきちんと確認することが重要です。
RTX 3060を搭載したグラボには、VRAM8GBのものも多く存在します。多くグラボのパッケージが似ているため、特に注意が必要です。
②メモリインターフェース幅を確認する
「GeForce RTX 3060」を選ぶ際は、VRAMの容量だけでなく、メモリバス幅も確認することが大切です。
VRAM12GBのRTX 3060はメモリバス幅が192bitとなっている一方、VRAM8GBのモデルはメモリバス幅が128bitとなっています。したがって、VRAMの容量を正確に確認することで、製品の選び間違いを避けることができます。
③システム電力要件を確認する
グラボを交換する際、パソコンの電源容量と補助の電源コネクタを確認することが重要です。
特にRTX 3060は、システム電力要件が550Wとされていますが、オーバークロック対応モデルでは600Wが推奨されています。自作PCからの電源の再利用を考えると、450Wや500Wのものも考慮に入れる必要があります。
補助の電源コネクタは「PCIe 8-pin」が一般的で、セミプラグイン電源を利用している場合は、必要なケーブルの有無を確認し、不足していれば変換ケーブルの準備が必要です。
④冷却性能を確認する
RTX 3060には、1から3個のファンを持つモデルがあり、デュアルやトリプルファンは、シングルファンよりも高い冷却効果と静音性を持っています。
特にデュアルファン以上のモデルには、ファンが停止するセミファンレスの仕様もあるので、静かな環境を希望する場合は、セミファンレスがおすすめです。
⑤グラボの大きさを確認する
ファンの数や大きさは、グラフィックボードの大きさや取り付けるPCケースに影響します。
例えば、シングルファンは小型で取り付けやすい一方、トリプルファンは冷却効果は高いものの大きさから狭いケースへの取り付けが難しい場合があります。大きなグラフィックボードを取り付ける場合、ケースの内部寸法やHDDベイの配置も確認する必要があります。
GeForce RTX 3060を搭載したデスクトップPC
ASUSのデスクトップPC「S500MD」は、CPUにCore i5-12400、GPUにNVIDIA GeForce RTX 3060を搭載しています。
性能のGPUを求めると、やはり値段は高くなってしまうのですが、このモデルはその中でも価格が安いため、エントリーモデルとしておすすめです。
基本スペックは次の通りです。
基本スペック | |
PCの種類 | デスクトップ型 |
OS | Windows 11 Home 64ビット |
CPU | Core i5-12400 |
GPU | NVIDIA GeForce RTX 3060(VRAM12GB) |
メモリ | 16GB |
ストレージ | 512GB |
参考価格 | 164,800円 |
まとめ
今回PROMPTYでは、Stable Diffusionのためのグラフィックボード選びのポイントと、GeForce RTX 3060の人気についての理由を詳しく解説しました。
今回の例を参考に、皆様も自分の予算や用途に応じたグラボを選んで、Stable Diffusionを使った画像生成に挑戦してみてはいかがでしょうか。
PROMPTYでは、Stable Diffusionのプロンプトや活用方法に関する様々な記事を取り扱っていますので、是非ご覧ください。
~Stable Diffusionで素早く画像生成するには~
Stable Diffusionの画像生成スピードや画像サイズは、グラフィックボード(GPU)の性能によって大きく変わります。
このため、より効率的かつ快適な画像生成を望むユーザーにとって、最適なグラフィックボードの選択が重要となります。
推論処理やLoRAなどの追加学習処理といった大量の計算を効率よく行うためには、12GB以上のVRAMを持つグラフィックボードを選ぶことを強くおすすめします。
2GBや4GBのVRAMを持つグラフィックボードでは、学習プロセスや高解像度の画像生成に支障が出る可能性が高いです。
コスパを重視する方は、RTX 3060を選ぶと良いでしょう。
このグラフィックボードを使えば、Stable Diffusionの画像生成機能を最大限に活用することが可能となります。