Tools for Humanityの共同創設者であり、OpenAIのCEOでもあるサム・アルトマン氏が立ち上げた新しい暗号通貨プロジェクト「Worldcoin」が注目を集めています。
Worldcoinの目指すものは、「すべての人間に新しいグローバルデジタル通貨を提供する」ことです。
そのために、人間とbotの区別を可能にし、すべての人に平等に無料の暗号通貨を提供する目的で、「Orb」という虹彩(眼球の色がついている箇所)スキャンシステムを用いています。
World IDとWLDトークンの導入と流通
ユーザーは、このOrbを使って自分の虹彩をスキャンし、一意な数値コード「World ID」を生成します。
World IDは暗号化され、ユーザーのウォレットやトランザクションにはリンクされません。
このWorld IDを使って生成したウォレットにログインし、「WLD」という暗号通貨トークンを受け取ることができます。
2021年5月から2023年7月までの間に、すでに30カ国以上で200万人以上の個人にWorld IDが提供されています。
そして、Worldcoinは現在35の都市で利用可能で、その中に日本も含まれています。
Worldcoinの評価と挑戦
Worldcoinのプロジェクトは、
・経済的機会の拡大
・AIと人間の判別による信頼性拡張
・世界的民主プロセスの可能性
・ユニバーサルベーシックインカム(UBI)への道筋を提供
などの可能性を秘めています。
しかし、プロジェクトの推進には一部で苦情が出ています。
一部のユーザーからは、虹彩スキャンを行ったにも関わらず、通貨を受け取れていないという声があります。
Worldcoinの資金調達と今後の展望
Worldcoinはこれまでに数億ドルの資金を調達しており、Andreessen Horowitz、Khosla Venturesなどのベンチャーキャピタル、リード・ホフマン氏などからも支持を受けています。
また、アルトマン氏自身がWorldcoinへの追加資金の確保を交渉中と報じられています。
一方で、アルトマン氏はAI規制に対する態度を和らげるようにアメリカの法律関係者に働きかけていますが、暗号通貨の規制には積極的な姿勢を見せていないと言われています。
また、Worldcoinの共同創設者である物理学者アレックス・ブラニア氏は、Worldcoinの取り組みが難しいと認めつつも、新しいテクノロジーの繁栄に必要な試みであると述べています。
彼は現在、Orbの台数を世界中で1,500台に増やすことを目標に掲げています。
Worldcoinの課題とセキュリティ問題
しかし、Worldcoinは数々の課題に直面しています。
例えば、Orbの一台当たりの価格が5,000ドルであり、操作者からも支払い遅延などの苦情が出ています。
また、Worldcoinが収集した生体認証データがブラックマーケットに流出している疑いがあるとのことで、中国ではカンボジアやケニアで登録されたWorld IDが1つ約30ドルで売られている事例があり、ハッカーによるOrbへの不正アクセスも確認されています。
今後、Worldcoinが目指す「すべての人間に提供する新しいグローバルデジタル通貨」の実現に向けて、これらの課題をどのように解決していくのか、引き続き注目が集まっています。