日立製作所 生成AIを活用して自動車向けソフトウェア開発の効率化

日立製作所は、11月21日に、自動車メーカーや車載器ベンダー向けに、生成AIを活用した自動車向けソフトウェア開発の効率化を支援する技術を開発したことを発表しました。本技術は、現在特許出願中とのことです。

参考:日立製作所

技術開発の背景

自動車業界では、ハードウェアを変更することなく、システムを制御するソフトウェアによる機能と性能を付加できる車両(SDV)の開発が注目されています。そのため、システム開発におけるソフトウェアの数が増加し、内容は複雑になっており、特に車両から収集した映像データの分析が重要となっています。

映像データ分析にはいくつかの課題が存在します。映像データは言葉で検索することが困難であり、希望するシーンを見つけるためには長時間の再生が必要です。また、交通状況の説明文を人が作成する場合、情報の粒度や表現にばらつきが生じ、開発に役立てにくい状況があります。

日立はこの問題に対して、自動車分野における豊富なナレッジを活用し、独自のプロンプトと生成AIを組み合わせた新技術を開発しました。

本技術の特徴・メリット

本技術でできること

日立が開発した最新技術は、生成AIを利用して、車載カメラの映像から交通状況に関する高精度な説明文を自動生成することが可能になるもので、日立の自動車分野における豊富な知識と独自のプロンプトによって実現されました。

自動車メーカーや車載器ベンダーは、車両から収集される映像データや走行データを活用し、データドリブンの車載ソフトウェア開発を推進しています。特に、ADAS(先進運転支援システム)や自動運転(AD)ソフトウェアの開発において、この技術の応用が期待されています。

日立の技術を活用することにより、開発者は映像の説明文を基にして必要なシーンを自然言語で瞬時に検索できるようになります。これにより、従来は時間がかかっていた映像データの再生とシーン抽出のプロセスが大幅に効率化され、開発期間の短縮とコスト削減に貢献します。

本技術のメリット

車載カメラの映像に対して、交通状況に関する高精度な説明文を自動生成できるようになるメリットは次の通りです。

①映像抽出時間の大幅な短縮

「横断歩道を歩行者が渡っています」などの説明文を自動生成することで、自然言語を用いた検索を可能にし、映像から必要なシーンを抽出する時間を大幅に短縮できます。

②走行データとの紐づけによる作業効率の向上

交通状況の説明文と映像データに車両の走行データを紐づけることで、ソフトウェア開発者や評価者の作業効率をさらに向上させます。これにより、開発プロセス全体のスピードと品質が向上します。

③分析に利用するデータの品質の均一化

生成AIを用いて文章を作成することで、人の能力や感覚に依存しない均一な品質のデータを準備することが可能になります。このアプローチは、データの利用頻度や再利用性を向上させ、より効率的なデータ活用を実現します。

引用:日立製作所

今後の展望

日立は、2024年9月までに自動車メーカーや車載器ベンダーを対象に、この技術を活用したクラウドベースのソリューションを市場に投入することを目指しています。また、自動車業界以外の分野でもこの技術の応用可能性を探る予定です。

さらに、日立はこれまで培ってきたOTA(Over the Air)ソフトウェア更新技術や車両制御データ分析技術を組み合わせることで、SDVの時代に向けての技術進化に貢献する計画です。

自動車業界における生成AI活用

自動車業界における生成AIの活用は、業界を変革する可能性を秘めています。自動車の開発だけでなく、ドライバーへの支援など様々な段階で生成AIが活用されています。

開発においては、ソニー・ホンダモビリティは、EV開発に生成AIを活用することを検討しています。大規模言語モデル(LLM)を自動運転や先進運転支援システム分野に用いて開発効率や完成度を高める方針です。ほかにも、メルセデスベンツやトヨタでの自動車の開発の生成AIを導入しています。

ドライバー支援においては、位置情報プラットフォームを提供するMapboxがカスタマイズされた音声アシスタントを作成できる新しい会話AIソリューション「MapGPT」の提供を開始しています。生成AIの導入により、ドライバーにより安全・快適かつインテリジェントでパーソナライズされた音声アシスタントをつけることができます。

生成AIの活用による安全で効率的な輸送システムの実現は、単なる技術的進歩にとどまらず、経済的および社会的な利益をもたらすでしょう。