オリジナルの社内生成AI「Buddy」で大きく業務を効率化 株式会社USEN WORK WELL(U-NEXT.HD)

今回は、USEN&U-NEXT GROUP で企業のウェルビーイング向上に貢献するオフィス向けBGMやグリーンエネルギー、生成AIツールなど、グループの各種サービスをオフィス向けに提供する株式会社USEN WORK WELLの代表取締役社長 住谷様、AI Lab 大谷様、芝田様にお話を伺いました。

プロフィール

株式会社USEN WORK WELL

代表取締役社長 住谷 猛氏

早稲田大学卒業後、証券会社に入社し人事部門でキャリアを築く。1999年、人事部長として大阪有線放送社に入社。人事・総務や法人営業部門の担当役員などを経て、2017年、株式会社U-NEXT HOLDINGS発足時より執行役員として、人事・総務・法務・情報システム・広報など幅広い部門を統括。2024年9月に株式会社USEN WORK WELLを設立し、代表取締役社長に就任。

株式会社USEN WORK WELL

AI Lab Buddy PdM unit INCUBATION team

大谷 悠介氏

新規事業の開発を視野に入れながら、社内の業務効率化、「Buddy」の新機能開発を企画・リードしている。また、オウンドメディア『AIとハタラクラボ』の編集長としてその活動を社外にも発信している。

株式会社USEN WORK WELL

AI Lab Buddy PdM unit INCUBATION team

芝田 龍正氏

INCUBATION teamのチームリーダーとして、新規事業・サービスの立ち上げと運営を推進。特にAIツール「Buddy」の開発に注力。専門は機械学習、人間工学、スポーツ工学。これらを生かし、AIと人間の協働による未来の働き方についての知見を発信。

オリジナルの社内生成AI「Buddy」 主にアイデア出して活用

Q:生成AIをグループ全社に導入した背景を教えてください。

住谷様:日本の企業社会で生成AIのChatGPTが話題になり始めたのは、2023年の初め頃だったと思います。そのようななか、当社グループの代表が毎月全社員にビデオメッセージを送っているのですが、2023年5月にビデオメッセージのなかで「ChatGPTはこれから業務において必要不可欠なものになるので、全社で活用しましょう」というメッセージを発信しました。

それ以来、U-NEXT HOLDINGSの部署内でプロジェクトベースにて、生成AIを業務に取り入れ、全社員が活用できるように取り組みを進めてきました。そして、2023年9月、U-NEXT HOLDINGSにAI業務改革支援部※を発足しました。

※現在は株式会社USEN WORK WELL AI Labに移管

AIに関しては主に二つの活動を行っています。一つは2023年11月にリリースしたグループ全社員向けのオリジナル社内生成AI「Buddy」の開発と、社員の利用促進および教育を担当しています。もう一つは、「Buddy」だけでなく、AIやその他のテクノロジーを活用してグループの全事業会社を対象に、一つ一つの業務を改革する、いわゆるBPRを進めています。この二つの柱で、現在まで取り組んできました。

※Buddyイメージ画像

Q:社内でどのように生成AIを活用しているのかを教えてください。

芝田様:「Buddy」についてのユースケースを言えば、当社グループでは主にアイデア出しが職種を問わず広く利用されています

具体的には、テキスト作成のアイデア出しや、企画自体のアイデア出し、エンジニアであればコーディングの補助としての活用事例があります。また、社内の情報を参照できる状態にしており、社内規定を確認するなどの活用も進んでいると思います。

※株式会社USEN WORK WELL様は生成AIの活用などについての情報発信をオウンドメディアで行っています。是非ご覧ください。

AIとハタラクラボ

PDFなどの資料と一緒にQ&Aを挿入することで回答の精度を向上

Q:「Buddy」の開発時に重要視した点を教えてください。

住谷様:開発は最初、新人を含む3人程度で行っていました。開発期間でいえば6月のプロジェクト発足から最初のバージョンが出来上がるまで、約3ヶ月というスピードで進みました。

生成AIの領域はやってみないとわからないことが多いので、とにかくスピード感を持ち、トライアンドエラーを繰り返して開発するという点を重要視しました

具体的に言えば、精度が低くてもできるだけ早くリリースし、社員にどんどんフィードバックしてもらい、その都度改善していくという形でした。

また、少し話は変わりますが生成AIの領域は皆、初心者なので、一定の能力とやる気さえあれば開発は新人でも可能だなと感じました

Q:「Buddy」において、社内情報の回答の精度を高めるために工夫した点を教えてください。

大谷様:Q&AをPDFなどの各資料と同時に導入することで精度があがりました。また、最初のうちはQ&Aの作成については人力で行いましたが、最近は少しずつ生成AIで行っています。

生成AI活用により推定、年間で15億円の削減

Q:生成AIを業務に導入したことによる効果を教えてください。

住谷様:BPRについては、9ヶ月で合計5万時間の業務時間削減を達成しました。また、「Buddy」については利用の頻度には差があるもののリリースした11月から9ヶ月で全社員のうち50%以上が活用するようになりました。

これより推定値ですが、月の所定労働時間が150時間で、社員一人が10%の業務時間を効率化できるとして15時間、これを年間に換算して12を掛け、最後に総社員数の半分の2500を掛けることで年単位で45万時間の業務時間を効率化できます。そしてこれを人件費に換算すると15億円くらいなので、大きく費用を削減できることになります。

Q:社内に生成AIの活用を浸透させるためにどのような取り組みを行ったのかをおしえてください。

住谷様:生成AIの活用を浸透させるためには地道にコツコツと社内PRを行うしかないと考えています。例えば、社内SNSの投稿を週2、3の頻度でずっとやり続けました。また、オフラインでのPRも大事だと考えており、全国の主要都市の事業所に社員が出向き、ビアバッシュのような形式でイベントを開催し、「Buddy」の使い方を紹介しました。これは一回に50人程度集まりました。

今後、生成AIは「働くインフラ」になる

Q:グループ全体で多くの事業を展開されていますが、今後生成AIは具体的にどういった事業でよく活用されていくと考えていますか?

住谷様:これについては、生成AIは特定の業種ではなく全ての業種で活用されるようになると考えています。

なぜかというと、おそらく数年のうちに生成AIは日本の企業社会のなかで「働くインフラ」になるからです。これはちょうど1995年くらいにWindows95の発売と同時にパソコンがオフィスに入ってきた時を考えていただければ分かりやすいです。

1995年から2000年くらいまでは、最新技術に関してキャッチアップの早い一部の人がパソコンに関心を持ち、使用していましたが、多くの人はパソコンを使っていませんでした。でも、今は皆パソコンを使っており、「働くインフラ」になりました。これと同じ事が生成AIでも起きると考えているので

Q:生成AIに関して今後の展望を教えてください。

住谷様:これについては、私はある程度社会がどうなるかを見据えています。生成AIは働く人に何を生み出すかというと、新しい時間です。この時間の使い道は働く人が自由に選べばいいと思います。

例えば、副業したいならすればいいし、趣味の時間にしてもいいし、もっと働いてもいいし、家族との時間にしてもいいのですこのような世界を生成AIに展望しております