生成AIを人材分野で活用 株式会社キャスター

今回は、リモートワークでの人材事業を行う株式会社キャスター様にお話を伺いました。

プロフィール

狗巻 勝博氏
株式会社キャスター 執行役員 / 株式会社LUVO 代表取締役

神戸大学大学院経営学研究科修了。グローバルガバナンスや戦略をベースとした経営層対象のマネジメントコンサルティング、およびM&A全体のプロセス実務に精通。後にキャスターに入社。
2024年9月株式会社LUVO 代表取締役に就任。

三浦 大助氏
株式会社キャスター パートナー / グラムス株式会社 代表取締役

アパレル商社でSEとして従事し、新規事業としてEC事業を立ち上げ。2010年グラムス株式会社を設立し、多国籍メンバーでネットショップ10店舗を立ち上げる。各種業務システムを自社開発した中から画像処理機能を「ZenFotomatic(ゼンフォトマティック)」としてローンチ、世界約170ヵ国のネットショップに提供中。2024年6月よりキャスターに参画。

人が介在する業務を効率化するために生成AIを活用

Q:キャスター社における生成AIの活用について教えてください。

狗巻さん:当社は企業のバックオフィス業務を支援するリモートアシスタントサービスを通じたBPaaS(Business Process as a Service)の展開を中心に人材事業を推進しています。業務プロセスの中で人が関与する部分が多く、特にコミュニケーションやオペレーションでは人が介在することが一般的です。

このため、当社は生産性や業務品質の向上には機械化や自動化が必要であると考え、テクノロジーの活用に積極的に取り組み、トライ&エラーを繰り返してきました。その一環として、生成AIの活用にも力を入れており、具体的にはGeminiやChatGPT-4oなどの生成AI技術を試しています。

これらの技術はそれぞれ特徴があり、どの技術が最適かを見極めるために試行錯誤を続けています。そして今回、生成AIの開発技術を持っているグラムス社をM&Aして、さらにキャスター社の事業へ生成AIを積極的に導入していく予定です。


Q:生成AIのさらなる活用を見越して、グラムス社をM&Aされたということですね。グラムス社の事業について教えてください。

三浦さん:グラムス社では、今年6月にキャスターとのM&Aを行いました。この背景には、グラムス社が近年Eコマース業界に特化したBPOサービスを提供していることがあります。具体的には、ささげ業務と呼ばれる商品撮影、採寸、商品情報や説明文の原稿書きなど、多岐にわたる業務を行っています。

もともとグラムスはEC運営およびEC事業者向けのソリューション開発事業として、私を含むソフトウェア開発者チームで創業し、Eコマースの出品作業を自動化・半自動化するSaaSシステムの開発に注力してまいりました。その中で、近年はSaaSだけでなく、丸ごとEC出品作業を請ける前述のBPOサービスや、これまで培ったオフショア開発のノウハウを活かした受託開発事業も行っており、これが現在のグラムスの姿です

生成AIを用いて求人票の作成を行う 業務時間を1/3削減

Q:キャスター社内部での生成AIの活用について教えてください。

狗巻さん:採用専門サービス「CASTER BIZ recruiting」では、生成AIを用いて求人票の作成を行っています。現時点では効果の具体的な数字はまだ出ていませんが、感覚的には1/3程度の業務時間が削減されています。この時間短縮がどのように業務効率に寄与しているかは、今後のデータで確認する予定です。

また、社内業務においてもSlackに生成AIを連携させて活用しています。例えば、リモートアシスタントサービスでお客様との窓口となるフロントというディレクターの役割を担う人がいるのですが、クライアントに対して複雑なメールを送る際などに、まず生成AIを使用しドラフトを作成することもあります。

生成AIを用いて社会全体の生産性を向上させていきたい

Q:生成AI活用に関する今後の展望を教えて下さい。

狗巻さん:我々は現在、クライアントにBPaaSを提供し、社会に対して労働力を提供する企業としての役割を果たしています。

そして今後、人口減少が確実に進行する中、これまでと同様、もしくはそれ以上の業務パフォーマンスを維持するには、プロセスやバリューチェーンの機械化・自動化が不可欠だと考えています

2024年9月に株式会社オルツと共同で設立したLUVOが取り組んでいく、AI社員派遣やAIオリジナルキャラクター制作サービスのローンチは、そうした観点から非常に重要です。これをまずキャスター社内でどのように適用し、生産性や業務品質をどのように向上させるか。そして、オペレーションの補完にとどまらず、コミュニケーションの強化にどう活用するかが今後の重要なポイントとなります。

そして、生成AIを含むデジタル技術で、我々の業務だけでなく、社会全体の生産性や効率性を向上させるための取り組みを進めていきたいと考えています。人口が減少する社会において、どのように社会貢献を果たし、その中でどうビジネスを展開していけるかを、今後も真剣に考えていきたいと思います。