20年間のダイレクトマーケティング実績×生成AIで業務効率化 株式会社ピアラ

今回は、株式会社ピアラのマーケティングDX本部の執行役員である小野真さんと、トレーディング本部のマネージャー、木﨑優毅さんにインタビューを行いました。

生成AIを用いた工数削減の実証実験や、20年間蓄積された広告パターンを生成AIに学習させてバナー作成を半自動化する試み、そして生成AIによる社内業務の標準化とリソースの削減に至るまで、生成AIを取り入れた効率化の取り組みについて、小野さんと木﨑さんから貴重なお話を伺いましたので是非ご覧ください。

小野 真
株式会社ピアラ マーケティングDX本部 執行役員
大学卒業後、2003年:WEBサイト、ECサイトの企画・制作業務を行う株式会社ジョイプロモ―ションを立ち上げ独立。その後2011年:株式会社ピアラに参画し、経営企画室長として、IT部立ち上げ、タイ子会社立ち上げ、中国子会社立ち上げを行い、2020年より日本国内外のマーケテイング業務に携わる。

木﨑 優毅
株式会社ピアラ トレーディング本部 マネージャー
新卒入社5年目。Web広告部門にて、ダイレクトマーケティング広告戦略から実際の広告運用・クリエイティブ制作まで幅広く従事。現在マネージャーとして広告部門を統括。現場経験を活かし、社内のDX化や、データ活用、AIを活用したシステムの企画を推進している。

生成AIの実証実験の大きな目的は工数の削減

Q:生成AIに関する実証実験を始めた背景や目的を教えてください。

小野さん:生成AIの実証実験を始めた大きな目的は、やはり工数の削減です。結局、私たちはウェブ広告事業を主軸にして現在進行中ですが、Web広告には様々な業務が伴います。

その一部として、例えばクライアントの商品やサービスについて、何が良いのか、どういうターゲットに向けて広告を出すべきなのか、といった点を検討します。実際に、様々な人々にインタビューを行ったり、YahooやGoogleの検索を用いたり、競合他社の調査を行ったりと、多岐にわたる調査や分析を通じて、クライアントの商品やサービスがどのように訴求し、どのターゲットに広告を展開するべきかを、人の力を借りて判断していました。

しかし、それには多くの人手と時間が必要です。人の力は重要ですが、できる限り作業を効率化していきたいと考えています。企業のサービスや商品の調査部分において、私たちが以前から使用していたツールや方法をChatGPTに学ばせ、生成させるアプローチを試みています。

20年間培った広告のパターンを生成AIに学習させることでバナー作成を半自動化

Q:バナー作成業務に関する生成AIの実証実験について教えてください。

小野さん:通常のWeb広告業務では、まずペルソナが設定され、その対象者に向けたクリエイティブ、つまりバナーが作成されます。それがYahoo、Google、TikTok、X(旧:Twitter)、インスタグラムなど、様々な媒体で使用されます。

現在、このバナーも人が作成していますが、バナー作成の過程をChatGPTを用いて半自動化しようとしています。私たちはオンライン・オフラインと両軸でのダイレクトマーケティングを20年間続けてきております。特にオンライン領域では、年間数万本作成するバナーから、何が効果的かをしっかりデータから分析・把握しています。

バナーの作成のためには、調査・分析、戦略の策定(WHO・WHATの設定)、表現の考案(HOWへの落とし込み)が必要になりますが、どの部分も生成AIを活用できると考えています。具体的には、調査データのまとめや、ペルソナ設定と戦略のパターン出しと優先度付け、そして表現の考案(バナー案の作成)です。

ChatGPTに過去の成功したデータや画像を学習させることで、それを基に最適なバナーを生成する手助けをしてくれます。例えば、表現としてベストな素材を生成する、背景を変える、キャッチコピーを追加するなどの作業が自動化されます。そしてAIの利用により、バナーに商品や人物の画像を適切に配置することも可能です。

現段階では、入力された情報に基づいて様々なバナーを生成するフェーズに取り組んでいます。最終的な目標は、ペルソナに基づき、適切なバナーが自動的に生成されるようにすることです。

生成AIによって社内業務の標準化とリソース削減を目指す

Q:生成AIをWeb広告分野で活用することで最終的にどのようなことを実現したいと考えていますか?

木﨑さん:一般的な回答や平均的な60点程度の答えは、生成AIが提供できると考えています。しかし、弊社が取り組んでいるようなWeb広告を通じて商品やサービスを検討してもらい、買ってもらうという領域は、非常に難易度が高いものです。そこでの知識や経験は、現在人間が持っているものですが、それをしっかりとAIに学習させ、社内業務の標準化と人材のリソースを削減することを目指しています。

最終的には、生成AIの存在により、誰もが戦略を描く能力を持つようになり、効果的なキャッチコピーやバナーなど、人々に響く広告が作成できるようになると考えています。それによって、より価値あるものが生み出されるのではないかと思います。

今後は生成AIの出力に対してフィードバックを与えることで、さらに質の良い出力を可能に

Q:生成AIの実証実験を経て、今後どのような展望を考えていますか?

小野さん:生成AIに対して特定のインプットをするとどのような出力が得られるか理解してくると、生成されたデータをフィードバックしてさらに改善することが可能です。そうすることで、精度はさらに高まります。

工数の削減の観点でいうと3割4割までは目指せても、7割8割の削減は難しいかもしれません。しかし、それ以上に、生成されるものの質が大幅に向上すれば、広告の費用対効果も向上します。ですので、単なる工数の削減を目指すよりも、出力の質を上げることが次の段階での目標です。

生成AIを効果的に使用できるスキルを持つ人材が重要に

Q:最後に生成AIは社会にどのような影響を与えると考えていますか?

小野さん:生成AIによって業種や職種がなくなるのではないかとよく言われますが、私はそうは思いません。料理に例えるなら、素材があっても、それを調理する人が必要です。もちろん、素材によって料理は変わるので、AIの導入によって一部の作業は効率化されるでしょう。しかし、最終的にはどのように調理するか、どのように業務を遂行するかという部分で、人間の役割は非常に重要です。

そのため、生成AIを効果的に使用できるスキルを持つ人材が重要になると考えています。AIを上手く使いこなせる人材が、これから重宝されるでしょう。