今回は画像生成AIを使ってイベントへの出展や審査員、画像生成AIに関する情報発信、記事の寄稿等を行っている殻Beeさんに取材しました。
生成AIを活用する際に心がけていることや、画像生成AIを活用するうえで注意すべき著作権等の問題、画像生成AIで今後社会がどう変わるかなど興味深いお話をいただきましたのでぜひご覧ください。
殻Beeさんの取り組み
Q:画像生成AIを使ってどのような取り組みをされているんですか?
殻Beeさん:私は主にコミケなどのイベントに出展する作品の制作を中心に活動しています。また、制作活動を円滑に進めるためにはAIの最新情報のキャッチアップも必要で、それに関する研究やSNSでの情報発信も行っています。最近ではイラストのコンテストが開催されることもあり、審査員を務めることもありました。
殻BeeさんのTwitterアカウントはこちら
無理にすべてをAIでやろうとしない
Q:画像生成AIを使ってクオリティーの高い画像を生成するために心がけていることはありますか?
AIを利用する際に私が特に注意していることは、無理にすべてをAIでやろうとしないことです。最近の画像生成AIは工程が複雑になってきています。例えば、去年は単にプロンプトを入力して、ジェネレートボタンを押すだけでしたが、今はさまざまな拡張機能を使っての修正や、一度人の手での加筆を行い、再度AIでの処理といった工程が増えてきています。
画像生成に限らず、AIを用いると効果的な部分と、逆に不都合が生じる部分が存在すると思います。もちろん、AIで難しいことをすべて完結させようと試みると、場合によってはそれが成功することもあります。しかしAIですべて完成させることを追求するとかえって時間がかかってしまう場合がほとんどです。そのような場面では、人の手で行った方が早くて楽だと感じます。
結局のところ、AIを使ってゼロからの画像生成するよりも、修正や微調整の工程で活用するという風潮が強まってきているように思います。
殻Beeさんの作品 ↓↓↓
画像生成AIは著作権や細部のミスに注意を払う必要がある
Q:画像生成AIを使用するうえで著作権の問題など、注意していることはありますか?
AIが生成する画像が既存の著名なアニメや漫画のキャラクターに極端に類似していると、法的な問題が生じる可能性があります。私自身はそのような問題に直面した経験はありませんが、そうした事例が存在するとは聞いています。生成された画像に何らかの違和感を感じた場合、公にする前にネットで検索などを行って確認するようにしています。
また、AIによって生成された画像は、初めて見た瞬間には特に問題を感じないことも多いのですが、よく観察すると、例えば「指が6本ある」といった細かなミスもしばしばあります。
結論として、画像生成AIは便利ですが、著作権や細部のミスには十分な注意を払う必要があると感じています。
独自のスタイルを持つイラストレーターの仕事はなくならない
Q:画像生成AIの普及によって、イラストレーターや絵師の仕事が減るといった議論がよくされていますがどのようにお考えですか?
画像生成AIの普及によって、イラストレーターの仕事量が減少していくかという疑問には、一様な答えは出し難いです。しかし、この技術の発展と普及を考えると、減少傾向になっていくとは思います。実際、中国では、商業的な活動の中でAIを活用した画像生成が進行しているというニュースもあります。
一方で、独自のスタイルや高い評価を持つ著名なイラストレーターについては、仕事量が減少することはないでしょう。しかしながら、特定のスタイルやブランドが確立されていない、一般的なイラストレーターにとっては、AIとの競合が厳しくなる可能性が考えられます。そのため、単に依頼を受けて絵を描くだけの受け身なスタンスでは、今後立ち位置が難しくなるかもしれません。
全ての人が画像を作れるなら土台となる「世界観」を提供する
Q:殻Beeさん自身は画像生成AIを活用して今後どうしていきたいと考えていますか?
画像生成AIの登場により、今では誰もが手軽に画像を生成できるようになりました。そんな時代だからこそ、「全ての人が画像を生成できるのであれば、その土台となる創作の世界観を提供しよう」という考えから、新しい創作サークルを立ち上げています。
私たちが提供するこの世界観の中で、参加者は独自のシーンやキャラクターを作り上げ、それを楽しんでいただくという企画を進めています。
他の技術と組み合わさることでブレイクスルーが起きる
Q:最後に、画像生成AIは社会にどう影響を与えると考えていますか?
画像生成AIは現状、絵を作れるだけなのですが、これを他の技術やサービスと組み合わせたとき、かなりのブレイクスルーが起きると思っています。
例えば、農業分野での活用は考えられていて、センサーで取得した農作物のデータをAIで解析し、収穫時の状況をシミュレーションするという事例があります。
医療関係では、大阪大学の研究として、MRIのデータを元にAIで画像を生成しています。これは、コミュニケーションの分野などで、実用可能性があります。
画像生成AIを他の技術と組み合わせることで、SFみたいな技術が現実になるんじゃないかと期待しています。