東京都、全局でChatGPTの業務利用を開始「文章生成AI利活用ガイドライン」も一般公開

東京都は8月23日、全局の職員5万人に「ChatGPT」という文章生成AIの利用体制を確立したことを明らかにしました。この生成AIはMicrosoftの「Azure OpenAI Service」に基づいており、都が新たに導入したものです。

セキュリティ対策に有用な「Azure OpenAI Service」を使用

Azure OpenAI では、モデルの再トレーニングに顧客データは使用されません。

引用元:Microsoft

Azure OpenAI Service では、OpenAI GPT-3、Codex、DALL-E モデルを使用した高度な言語 AI を顧客に提供し、Azure のセキュリティとエンタープライズの約束を実現します。 Azure OpenAI は OpenAI と共に API を共同開発し、互換性を確保し、一方から他方へのスムーズな移行を保証します。

Azure OpenAI を使用すると、顧客は OpenAI と同じモデルを実行しながら、Microsoft Azure のセキュリティ機能を使用できます。

引用元:Microsoft

「Azure OpenAI Service」は、ユーザーが入力したデータを学習のために使用しないだけでなく、サーバー上にも保存されません。そのため、ガイドラインでは、職員が業務でこのAIを使う際には、都が設計したシステム内での利用することを推奨しています。

職員向け「文章生成AI利活用ガイドライン」を一般公開

東京都が公開した「文章生成AI利活用ガイドライン」はあくまで職員向けのものですが、非常に体系的に説明されているため、一般的な利用の際にも活用することができます。

引用元:東京都

さらに、都は「文章生成AI利活用ガイドライン」を公開しました。このガイドラインは利用時の基本ルールや、より良いプロンプトの作成方法、そしてAIの今後の方向性などを明記しています。この内容は、専門家の意見をもとにまとめられたそうです。

引用:東京都

東京都が公開している「文章生成AI利活用ガイドライン」の概要を見てみると、

  • 生成AIについて
  • 利用環境
  • 利用上のルール
  • 効果的な活用方法
  • 今後の展望

の5章の構成になっており、生成AI基本的な定義や仕組み、リスクや利用上のルールなどにも触れた上で、幅広くプロンプトエンジニアリングの知識などにも言及されています。このように、行政が正式に生成AIの活用方法について言及したガイドラインを公表するのは全国でも導入が進んでいる事例と言えます。

引用:東京都

特に、資料13ページの「職員が守るべきルール」の部分では、非常に分かりやすくまとめられています。PROMPTYでも以前公開した記事ではセキュリティ問題などについては解説してきました。

言語モデルが事実とは異なる内容や文脈と無関係なもっともらしいウソを生成してしまう「ハルネーション」や、著作権の観点での注意点の問題などについても言及されています。

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引用:東京都

また、東京都が公開している「文章生成AI利活用ガイドライン」ではプロンプトの例とともに活用方法のコツや、利用に向いているもの、向いていないものについての言及もされています。

ChatGPTを触れたことがない方でもプロンプト例と一緒に解説されているので、理解しやすい内容だと感じました。

東京都が生成AI導入を推進した社会的な意義とは

生成AIに関するセキュリティ課題に一つの答えを示した

東京都が生成AIの導入を推進したことは、多くの社会的な意義を持っていると言えます。第一に、多くの人々が抱いていた生成AIに関するセキュリティの課題に一つの答えを示したことが挙げられます。

「Azure OpenAI Service」の導入により、入力データが学習目的で使用されないという保証や、サーバ上にデータが保存されない点は、個人情報の保護や機密性の確保といったセキュリティ面での懸念を大いに軽減しました。

しかし、依然としてセキュリティリスクが「ゼロ」になったわけではありません。そのリスクに対する認識と対策は引き続き重要と言えるでしょう。

PROMPTYでも生成AIを使用する際の注意点については詳細に扱っているので、是非ご覧ください。

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生成AIへの認知がさらに広がった

また、東京都という公的な機関がこのようなAI技術を積極的に取り入れることで、一般の人々や他の組織に対しても生成AIへの認知がさらに拡大したと言えます。都の先駆的な取り組みは、生成AIの可能性をさらに探るきっかけを提供し、社会全体でのデジタル変革の加速を促進する方向へと進むでしょう。

「プロンプト」という言葉が当たり前の時代に?

ガイドライン内で何度も触れられた「プロンプト」という言葉は、今後の情報技術やAI利用の中で、当たり前の言葉として浸透する可能性が高まっています。

引用:Googleトレンド

上記のデータは「Googleトレンド」と呼ばれる、検索キーワードの検索需要の推移をグラフでチェックできるツールで、語句「プロンプト」の検索需要を調べたデータです。

過去5年間の推移を見ても、2023年2月以降に大きく検索需要が増えていることが分かります。「プロンプト」という言葉が当たり前のように使われる時代が数年以内に来るのかもしれません。