生成AIを活用して住まい探しの検索体験を向上 株式会社LIFULL

今回は、株式会社LIFULLのテクノロジー本部ユーザーファースト推進ユニット長である山﨑 顕司さんにお話を伺いました。

生成AI技術と不動産情報サイトを掛け合わせたサービスの立ち上げや、生成AIを使った社内向けのサポートなど生成AIの活用・導入を考えている方にとって貴重なお話いただきましたので、ぜひご覧ください。

プロフィール

テクノロジー本部ユーザーファースト推進ユニット長
山﨑 顕司さん

開発会社での多数の新規事業立ち上げや、スタートアップでの技術責任者を経て、
2017年に新規事業技術責任者として株式会社LIFULLにジョイン。
新規事業制度設計や組織構築など技術領域以外の様々な物事をエンジニアリングする。
2023年より生成AI組織とUXリサーチ組織の兼任マネージャーを務める。

住まい探しの検索体験をより良いカタチに

Q:今回の生成AIを組み込んだサービスを開発した背景を教えてください。

山﨑さん:当社は不動産ポータルサイト「LIFULL HOME’Sを運営しております。このプラットフォームでは、不動産物件を提供している不動産会社と、住まいを探しているユーザーをマッチングするサービスとなっています。

私たちは従来から不動産物件の検索サービスを提供してきましたが、より良い住まい生活を実現するために、新しい検索軸や体験を提供できないかと常に技術的な検証を続けています。

そんな中、生成AIの登場により、新しい住まい探しの検索体験を良い形にできるのではないかと考え、この技術探索を進めていました。そこで、従来から取引関係あった野村不動産ソリューションズ様の「ノムコム」というサービスの中の「AI ANSWER」を活用し、それを新しい形にすることでより良い検索体験を実現できるのではないかと考え、この取り組みを始めました。

Q:今回のサービスでは「こういう物件ありますか?」と聞いたら物件を提案してくれるのでしょうか?

山﨑さん:初めての購入でわからないことがある場合、AIに質問しながら進めることができます。「千代田区で1億円のマンションを探しています」といったように具体的な不動産物件を直接検索することもできます。この裏ではGPTによるAPI活用とノムコムで様々なデータ検索をしています。

ー1回に出力される情報も多く、写真もついていてわかりやすいですね。

山﨑さん:ダイレクトに物件を検索すると、写真を含む詳細な情報が提案されます。また、マンションが良いか、一軒家が良いか、賃貸が適しているか、それとも購入が望ましいかといった、より初期段階の質問に対するコミュニケーションも可能です。

早期にChatGPTのプラグインを開発

Q:以前ChatGPTのプラグインで大きな話題になりましたが、そちらについてもお聞かせください。

山﨑さん:当社では、生成AIを不動産領域で積極的に活用するために、2023年5月に専門の組織を立ち上げました。その最初の取り組みとして、プラグイン開発が可能になったことから、素早い形で世の中にローンチしようという形で取り組みました。実証実験だけでなく、実際のユーザーに向けたサービスを開発することで得られる知見を増やすために、早期から具体的なプロダクト開発に着手しました。

ただ、ChatGPTのプラグインは、そのプラットフォーム内でのみ機能し、有料契約をしているユーザーのみが利用できるようになっています。その中で、より多くの方にご利用いただけるよう、他のプロダクトへの導入を進める中で、野村不動産ソリューションズ様と共に、「AI ANSWER Plus」の開発に至りました。

スタッフ支援やフワちゃんの企画など多岐にわたって生成AIを活用

Q:他にも生成AIに関する取り組みはありますか?

山﨑さん:「接客サポートAI」というGPTの技術を活用した住宅弱者向けの住まい探しを支援する特化したサポートAIの開発に取り組んでいます。これは「フレンドリードア」という住宅弱者を対象とした社会課題の解決に向けた取り組みの一環です。このプロダクトについては、エンドユーザーではなく不動産スタッフをサポートするためのツールとなっています。

住宅弱者向けに提供するサービスでは、基礎知識や住まい探しに必要な独特な知識が必要です。そのため、どのような情報が必要かを学習したり、把握することが非常に重要であり、現場からもそのような声を聞いていました。これらの困っているスタッフをサポートするためのツールとしてのサービスを開発しました。

この取り組み自体が独特でLIFULLらしい取り組みで、多くのメディアにも取り上げていただいています。

Q:AIで生成した「フワちゃん」の企画も非常に面白いと思いました。

山﨑さん:山﨑さん:LIFULL のブランドコミュニケーション施策では、フワちゃんをもとにした生成画像10,000種類を通して、LIFULL の企業姿勢を伝えるという企画が行われました。

画像は社内のブランディングチームがディレクションとクオリティ検証、社外の制作会社が生成を行いました。リアルなプロダクトはもちろんのこと、このような面白いアイデアも我々らしい取り組みだと考えています。

今後は社内向けのサポートにも注力

Q:社内で接客サポートAIのような生成AIツール動きは増えているのでしょうか?

山﨑さん:開発メンバー以外にも業務の利用でしたりなど、様々な状況の中で生成AIを積極的に活用しようという動きは増えています。

Q:生成AI活用されたサービスや社内向けのサポートなど、今後取り組んでいきたいことはありますか?

山﨑さん:社内向けの情報の中には、まだ公開できないものもありますが、業務の支援や効率化には積極的に取り組んでいます。

例えば、Excelの関数使用方法の確認やプログラムコードの生成など、ChatGPTを活用してプログラミングの効率化を図るような活動をしています。さらに、GPTを用いた社内独自のチャットボットの開発なども行っています。